2018 Fiscal Year Research-status Report
既知フォールドの再配線による新規フォールド予測法の開発
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16K07315
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
千見寺 浄慈 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10420366)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | タンパク質 / 立体構造予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は新規フォールド構造に対して有効な立体構造予測方法を達成するための最も重要なパーツである「平行βシートタンパク質の天然構造として存在できるフォールドとできないフォールドを見分けるルール」の発見に成功したが、本年度はこのルールが、進化のサンプリングバイアスではなく物理的に必然であること、そしてその物理的起源を解明する事ができた。 具体的には、平行βシート構造の中で最も頻繁に見受けられる構造モチーフであるβαβモチーフにおける二つのβストランドのずれ方に非対称性があることを前年度までに発見したが、この物理的起源が排除体積効果と水素結合エネルギーの二つで説明できること、また、これは主鎖構造のみによって決まる非対称性であり、アミノ酸配列に依存しない事を明らかにした。この証明は、厳密構造数え上げによって全構造空間を網羅した計算によって行われたため、結論に至る論理の曖昧性がほとんどない、かなり強い論理を作り上げる事ができた。 この結果と、既知のルールを組み合わせて、全てのルールを同時に満たす事ができるフラストレーションのないフォールドを計算機で全て列挙したところ、平行βシートタンパク質に関してはタンパク質立体構造データベースにおける出現頻度を極めてよく再現できた。これにより、以前から広く認められていたタンパク質のフォールドの数が有限であることの説明が、平行βシートタンパク質に関しては、進化のサンプリングバイアスではなく、物理法則による必然である事がわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的である新規な立体構造予測手法を開発のために必要となる様々な部品の中で、最も重要なパーツである「タンパク質の天然構造として存在できるフォールドとできないフォールドを見分けるルール」の物理的起源を明らかにすることができ、内容的には当初の予定を上回る結果が得られた。この様に内容的には大きく進展したが、その分論文の出版が遅れたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの結果をまとめて論文として出版する。
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Causes of Carryover |
研究期間終了直前に著しく研究が進展し、当初予定していた結果よりも優れた結果が得られた。より優れた研究成果を発表するために、追加計算および論文執筆時間が必要であり、これらのために期間を延長した。次年度使用予定の助成金は、論文の英文校正および論文投稿料に使用する。
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