2017 Fiscal Year Research-status Report
光センサータンパク質における特異な水素結合構造の解明
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16K07318
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
岩田 達也 東邦大学, 薬学部, 准教授 (20569917)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光受容体 / 光センサータンパク質 / フーリエ変換赤外(FTIR)分光法 / BLUFドメイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は光センサータンパク質における特異な水素結合環境を明らかにすることである。 平成28年度の報告書で触れたLOVドメインに関する研究は論文が受理され公開となった。 【論文内容】LOVドメインはフラビンを発色団として結合したセンサータンパク質ドメインであり、光を受けるとフラビンが近傍のシステイン残基と共有結合を形成する。私はフラビンのN3-H基がLOVドメイン内で強い水素結合を形成していることを見出し、その光誘起構造変化に伴う環境変化について議論を行った。 平成29度はフラビン結合光受容ドメインでLOVドメインとは異なる光反応をおこなうBLUFドメインを対象として、そこで観測されるチロシン側鎖のO-H基の強い水素結合が形成される構造を明らかにした。AppA-BLUFを計測した結果、他のグループによる先行研究が指し示すとおり、グルタミン側鎖がケト型からエノール型への異性化が起こっているが、チロシンのO-H基はエノール型グルタミンの窒素原子に水素結合を形成し、それが強い水素結合を形成する原因であることがわかった。また、先行研究では特定されなかったグルタミン側鎖の回転異性体構造を明らかにすることができた。グルタミン近傍のトリプトファン残基の水素結合の関与の有無がFTIRシグナルに大きな影響を与えることが示され、先行研究で用いていたBLUFドメインと我々が計測したBLUFドメインのスペクトルの形が大きく異なる原因であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度の1年間は本申請の研究を東邦大学で行うための下準備を行っていた。従って、実験を行いデータを出すには至らなかった。ただ、それ以前に蓄積したデータをまとめて論文として出力するための用意はしている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はBLUFドメインの結果を論文として出力する。昨年度に投稿までは至らなかったが、投稿に向けた準備は整っている。 また、微生物の青色光センサータンパク質であるイエロープロテインを対象として、暗状態で観測される強い水素を形成したO-H基かN-H基の由来を明らかにする。FTIR分光計測の結果、暗状態と短波長中間体との差スペクトルで、暗状態に由来する2600 cm-1のシグナルを観測した。これはきわめて強い水素結合を形成したO-HかN-H伸縮振動に由来する可能性がある。13C、15N、18Oなどの同位体標識試料を作成、計測しており、その結果を解析していくことで特殊な水素結合環境を明らかにできるものと考えている。
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Causes of Carryover |
2016年度10月に名古屋工業大学大学院工学研究科から東邦大学薬学部に所属が変更となった。 その関係で、2017年度は講義・実習およびそれに付随する準備に多くの時間を割かなければいけない状況であった。 また、本研究の遂行に協力してくれる学部学生を育成するため、その学生たちへの基本的な実験技能の修得にも時間がかかった。幸いなことに、研究室の運営費が比較的潤沢にありその経費にて学生の指導を行った。結果として本研究を進めることがかなわず、当初の研究費の使用計画と合致しない(研究費を使えない)こととなった。 2018年度は講義の準備の時間が減少して自分自身が研究に時間を取れること、また学生の指導などで研究体制が整ったことから、本研究の遂行に注力することが出来るものと考えている。
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Research Products
(1 results)