2018 Fiscal Year Research-status Report
超解像蛍光イメージングによるアクチンフィラメントとミオシンの動態解析
Project/Area Number |
16K07322
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
和沢 鉄一 大阪大学, 産業科学研究所, 特任准教授(常勤) (80359851)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 超解像イメージング / アクチン / 偏光 / 蛍光 |
Outline of Annual Research Achievements |
アクトミオシンは,アクチンフィラメントとミオシンから構成される蛋白質複合体であり,アデノシン5’-三リン酸(ATP)の加水分解反応によって得られるエネルギーを用いて一方向性の運動や力発生を行う蛋白質分子機械である.本研究では,アクトミオシンが動作するときにアクチンフィラメント上で起こるイベントを超解像蛍光イメージングによって数10 nmの分解能で解析することにより,その動作メカニズムの解明を目指すものである. 今年度は,SPoD(Superresolution by Polarization Demodulation)超解像顕微鏡の改良を行った.SPoD顕微鏡を用いた超解像イメージングでは,照明光に高い偏光度が要求される.昨年度に製作したSPoD顕微鏡を検討したところ,照明光の偏光度が偏光面の角度に依存して変動し,偏光比の極小値は10:1以下にまで低下した.そこで,SPoD顕微鏡の照明光学系を全面的に見直し,偏光度の低下を抑えるための措置を行った.照明光学系を詳細に検討したところ,ミラー上での反射に伴う光波の位相シフトの偏光依存性が照明光の偏光度低下の主たる原因であることが判明した.そこで,このような光波の位相シフトを補償するメカニズムを照明光学系に組み込むことで,照明光の偏光度は10倍以上の改善を達成した.さらに,このSPoD顕微鏡の性能評価のためにヒト由来細胞内のアクチンフィラメントや中間径フィラメントを蛍光標識して超解像イメージングを行ったところ,約50 nmの空間分解能を達成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の研究計画では平成30年度中に,(1)本研究課題で開発したSPoD超解像顕微鏡を用いたアクトミオシン系の測定と,(2)SPoD超解像顕微鏡技術の応用展開に取り組む予定であった.しかし,当初予期していなかった問題として,開発したSPoD超解像顕微鏡において照明光の偏光度低下があることが判明したため,今年度はその問題解決にあたる必要があった.偏光度の低下の原因を究明した結果,SPoD超解像顕微鏡にそれを補償するための改変を加えたことで,問題点はほぼ解決されたと思われる.ただし,この当初予期していなかった問題点を解決することにより,当該SPoD超解像顕微鏡技術はより高い完成度を達成したと言える.ここで発生した進捗の遅れは,当該課題の研究実施を1年間延長することで取り戻す予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,(1)今年度改良したSPoD超解像顕微鏡を用いてアクトミオシン系の測定を行うとともに,(2)SPoD超解像顕微鏡技術の応用展開に取り組む.アクトミオシン系の計測では,超解像顕微鏡を用いて,アクチンフィラメントのナノメーターレベルの形とその屈曲運動等のダイナミクスを解析する.さらに,アクチン結合タンパク質やATPの存在する条件において超解像観察を実施し,アクチンフィラメントのダイナミクスと化学力学共役によるエネルギー変換との関係について解析を行う. SPoD超解像顕微鏡技術の応用展開については,ヒト由来培養細胞を使った超解像イメージングを行う.この超解像顕微鏡では比較的少ないフレーム数の取得で超解像画像再構成に必要な画像データセットを取得できるので,超解像タイムラプス観察が可能である.これにより,細胞動態を従来にないような高解像度での観察に取り組む.さらに,この超解像顕微鏡技術のライブセルイメージングにおける有用性を検証する.
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Causes of Carryover |
今年度は,当初予期していなかった問題点として,SPoD顕微鏡の光学系で生じる偏光度低下が判明した.これは超解像イメージングの解像度に大きな影響がある.これを解決するために時間を要したため,当該研究課題を1年延長し,アクトミオシンや細胞の計測を次年度に行うことにした.
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] Highly-biocompatible superresolution imaging by SPoD-ExPAN with Lp-regularized image reconstruction2018
Author(s)
Wazawa, T., Arai, Y., Kawahara, Y., Takauchi, H., Washio, T., Nagai, T.
Organizer
日本生物物理学会年会
Int'l Joint Research
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