2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K07326
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
柴山 修哉 自治医科大学, 医学部, 教授 (20196439)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヘモグロビン / アロステリー / X線結晶構造解析 / 光解離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究代表者の柴山が開発してきた独自のヘモグロビン分子の調製法と結晶化技術に、高繰り返し光解離法と低温捕捉X線解析法を組み合わせて、配位子光解離後のヘモグロビン分子内動態の直接観測を目指している。 この課題を達成するためには、試料面では光解離実験に適した良質なヘモグロビン単結晶の作製、ハード面では光解離収率を向上させ中間的状態の相対的な安定化を図る工夫が必要である。さらにヘモグロビンでは、ミオグロビンとは異なり、配位子移動動態をT状態とR状態の両方で比較評価する必要がある。 当該年度では、光学的に薄く、かつ、回折強度に優れたTとRの両方のCO結合型ヘモグロビン単結晶試料の調製を集中的に行った。ハード面では、パルスレーザー、顕微分光光度計、および、低温窒素吹き付け装置を組み合わせた(実験室系)低温光励起顕微分光測定システムを構築して、CO結合型ヘモグロビン結晶の光解離条件を検討した。また、同システムを用いた、光活性化アデニル酸シクラーゼ結晶(フラビンタンパク質)、塩素イオンポンプロドプシン結晶(レチナールタンパク質)の光励起分光実験も行い、システムの有用性を検証した。 上記の結果を基礎として、R状態CO結合型ヘモグロビン結晶を対象とした時分割単結晶X線構造解析を行った。光解離したCOの電子密度を時間追跡し、ヘム鉄からタンパク質外部に至る移動経路と、COを送り出すタンパク質部分の動きを同定した。これらの実験結果から、α鎖とβ鎖の違いが浮き彫りになった。現在、差分距離行列を用いて、COの解離したヘムから主鎖構造の変位が分子全体に広がっていく道筋を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験室系の低温光励起顕微分光測定システムが稼動したこと。放射光での測定条件(レーザー強度、周波数、温度など)の検討を事前に実験室で行えるようになり、作業の効率化が図られたこと。また、難易度の高い(光解離収率の低い)R状態ヘモグロビン結晶の光解離結晶構造解析実験に成功したこと。以上の点から、今後の実験も円滑に遂行できると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、本研究課題を遂行するための高エネルギー加速器研究機構のビームタイム(PF AR NW12A)が配分されている。これに照準を合わせて予定通り実験を進める。
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Causes of Carryover |
初年度予定していた低温顕微分光装置の立ち上げが遅れた分、放射光実験に関わる支出が最終年度に集中する形となった。具体的には、平成30年度に配分されているPF AR NW12Aでの光解離実験に必要なミラー、レンズ、簡易定盤などの光学部品を追加購入する(ビームラインハッチ内で要求される光学系の配置が実験室系のそれと異なる)。また、放射光施設でパルスレーザーを長時間連続使用するためにはビームラインに持ち込み可能な冷却装置が必要であり、この用途で使用する小型恒温循環水槽を購入する予定である。
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Research Products
(4 results)