2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K07329
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Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
山本 竜也 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 研究員 (70437573)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | タンパク質 / 質量分析 / 構造変化 / H/D交換 / ソフトウェア開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
質量分析とH/D交換反応を利用して、大量発現系を用いずに目的とする生体試料から直接微量タンパク質を取り出し、その構造変化をみるという課題に挑んでいる。本年度は具体的にはAdenylate kinase(AK1)、やMAPRファミリータンパク質といった細胞増殖を担うタンパク質群を中心に、測定データの収集を始めた。サンプルの必要量は現在0.9ugまで微量化することに成功し、今後は更なる微量化が見込めるデータも得られている。得られている情報は1次構造上95%のカバー率で、重水素化率の違いから構造変化部位を決定できることが分かった。リガンドのADPによく似たアナログ物質ではその相互作用部位や結合に伴うダイナミクスの変化が観測できた。解析時間においては昨年度に開発した専用ソフトウェア(ソフトウェア名:XD scipas)によって、1データあたり3日程度から3時間程度まで短縮できていたが、サンプルごとの実験条件の最適化に際しトライ&エラーの回数をより多く稼ぐ目的でソフトウェアコードの見直しを行った。計算の並列化や収束条件の最適化により2分程度の解析時間にまで縮めることに成功した。実験条件についても、そのソフトウェアを使うことでサンプルごとの最適条件ではなく、どんなサンプルでもそれなりのデータが得られる条件の探索に成功し、様々なサンプルの高速解析につながる成果が得られた。また解析データの高度化も行い、同位体分布の形状から平均データだけでなく溶液中で異なるタンパク構造変化をしている集団を分離することに成功し、それぞれ重水素交換速度と溶媒露出割合を算出するアルゴリズムの開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目は初年度に構築した基盤を生かし、応用実験を始めた。実サンプルを測定していく中で基盤構築の更なる発展も進んだ。解析時間は数日かかっていたものが数分で終わるまで高速化し、その結果として実験条件もより安定したものへと発展した。また解析データそのものも高度化され溶液中のタンパク質について、平均化した重水素化データだけでなくアミド水素ごとに分離したデータを取り出すことに成功し、これまでよりも詳細な議論ができるものになった。今後の研究で実例を増やすことにより方法論としても論文などを通じて広めつつ、細胞増殖のシグナル伝達を中心に分子メカニズムを明らかにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
28~29年度に構築した実験手法や解析ソフトといった基盤技術を基に、目的生物の細胞や組織から直接タンパク質群を抽出し溶液構造解析を進める。すでに測定は開始しておりAdenylate kinase、やMAPRファミリータンパク質といった細胞増殖を担うタンパク質群を中心に結合タンパク質探索を行い、それらとの構造学的な相互作用解析を行う。本研究を通じて大量発現系を用いることなく翻訳後修飾やタンパクの量比が適切な状態での溶液構造解析を実現し、in vitroな構造解析とin vivoでの表現型をつなぐ研究成果を得たい。また開発した手法やソフトウェアを公開・改良することで、他の研究者が新たなタンパク質間ネットワークのメカニズム発見やメカニズムを解明する一助になるよう論文化を勧める。
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Causes of Carryover |
当該年度に論文化の予定であったが、内容をより深められる状況であったために実験とソフトウェア開発の追加・改良を進めており、それらが終了次第論文化予定である。
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