2017 Fiscal Year Research-status Report
小胞体ストレス応答におけるSnf1 AMPKによるHog1 MAPKの制御機構
Project/Area Number |
16K07336
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
水野 智亮 筑波大学, 医学医療系, 助教 (80529032)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス / キナーゼ / ホスファターゼ / 遺伝子発現制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境・遺伝要因によって、不良タンパク質が小胞体内に蓄積することを小胞体ストレスと言う。小胞体ストレスが生じると、それに対する応答機構が活性化し、不良タンパク質の修復と除去がおこなわれる。小胞体ストレス応答は、本来、小胞体の恒常性を維持するために細胞に備わっている防御機構である。しかしながら、小胞体ストレス応答機構が過剰・持続的に活性化すると、細胞死が誘導される。小胞体ストレス応答機構の過剰・持続的活性化による細胞死は、神経変性疾患・糖尿病を含む様々な疾患の要因になっている。したがって、小胞体さらには細胞の恒常性維持において、小胞体ストレス応答のファインチューニングは不可欠である。そこで、申請者は、出芽酵母をモデル系として、小胞体ストレス応答制御機構を解析し、AMP依存性キナーゼ(AMPK) 出芽酵母ホモログSnf1が、小胞体ストレス応答においてIre1-Hac1経路・Hog1 MAPキナーゼ経路を負に制御していることを見出してきた。さらに申請者は前年度、Snf1の3種類の選択的制御サブユニットSip1/Sip2/Gal83のなかで、Gal83が小胞体ストレスにおけるHog1の制御において最も重要であることを見出した。今年度は、Hog1を脱リン酸化することによって不活性化するPtp2に着目して、研究をおこなった。その結果、Ptp2の発現量が小胞体ストレスによって上昇すること、この上昇はMpk1 MAPキナーゼとその下流で機能する転写因子Rlm1に依存していることを見出した。rlm1変異株では、ptp2変異株と同様に、小胞体ストレス応答時のHog1活性が野生株に比べ上昇していた。これらの結果から、Mpk1-Rlm1経路はPTP2の転写を活性化することによってHog1活性を負に制御していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き、今年度も、Hog1の脱リン酸化・不活性化に機能するPtp2の解析から、小胞体ストレス応答に機能するシグナル伝達経路間における遺伝子発現を介したクロストークを新たに示すことができ、出芽酵母小胞体ストレス応答のファインチューニングメカニズム解明に近づくことができたと考えることから。
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Strategy for Future Research Activity |
Snf1は、Hog1経路活性化因子をコードするSSK1の遺伝子発現制御を介して、小胞体ストレス応答におけるHog1活性を制御している。しかしながら、Snf1によるSSK1遺伝子発現制御機構の実態は不明である。SSK1プロモーター制御下でレポーター遺伝子を発現するコンストラクトを導入すると、野生株では、小胞体ストレスによってレポーター遺伝子の発現上昇がみられる。これに対して、Snf1活性化株では、レポーター遺伝子の発現上昇が抑制される。そこで、このレポーターコンストラクトを利用して、小胞体ストレス応答におけるSSK1遺伝子発現制御に関わるシスエレメントとトランス因子を探索する。
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Causes of Carryover |
次年度に遺伝子発現量の定量実験を多くおこなう必要性が生じてきたため、RNA抽出試薬・リアルタイムPCRキットの購入費として約17万5千円を繰り越すこととした。繰越金は消耗品費購入に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)