2016 Fiscal Year Research-status Report
リボソーム生合成因子がプロテアソーム形成を制御する機構を解明する
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16K07342
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
八代田 英樹 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (20311425)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プロテアソーム / リボソーム / 複合体形成 / タンパク質分解 / タンパク質合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内の恒常性は絶え間ないタンパク質合成とタンパク質分解により保たれていると考えられる。細胞内におけるタンパク質合成を担うリボソーム、選択的なタンパク質分解を担う26Sプロテアソームはいずれも数十のタンパク質が集まって形成される巨大なタンパク質複合体である。これらの複合体を形成するための形成過程は複雑でまた不確かなところが多く残されている。申請者らはプロテアソーム形成に異常を示す変異を探索し、リボソーム生合成に関わるeIF6の変異を得た。この遺伝学的関連を分子レベルで説明することを目的とする。これによって、eIF6による新しいプロテアソーム形成制御機構を明らかにするとともに、タンパク質合成とタンパク質分解という細胞内での2大イベントを連携させる仕組みというこれまで全く知られていない機構の解明につなげることを目指す。 今年度の解析の結果、 eIF6のノックダウンはタンパク質分解活性を有し7種のαサブユニット、βサブユニットから形成されるαリングとβリングがαββαの4層に重なって形成されている20S core particle (CP)の形成に異常を示すことがわかった。 また、eIF6に対するポリクローナル抗体を作製し、細胞抽出液をグリセロール密度勾配遠心法により分画し内在性のeIF6の局在を観察すると完成した26Sプロテアソームが含まれる画分には eIF6は検出されなかった。 このことからeIF6が26Sプロテアソームサブユニットと直接相互作用するとしたら、 完成した26Sプロテアソームに含まれるサブユニットではなく、形成途中のプロテアソームサブユニットと結合している可能性が高いと考えられる。 これらのことから eIF6の解析によりタンパク質合成とタンパク質分解のマシナリーが相互に協調している可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. eIF6のノックダウンにより20S core particleの形成異常がβサブユニットの組み込みにあることが明らかになってきたが、当初予定していたeIF6ノックダウン細胞から形成不全を起こして蓄積したプロテアソーム形成中間体をNative-PAGE、もしくはグリセロール密度勾配遠心法により分離し、それをさらにアフィニティー精製することで単離精製し、得られた形成中間体の構成成分を質量分析法によって明らかにするところまでには至っていないため。 2. 酵母ツーハイブリッド法により検出されているeIF6とプロテアソームサブユニットとの結合が実際に動物細胞内で見られるかどうかを分画後のサンプルを用いた共免疫沈降実験により検証中である。内在性のeIF6を検出するためのポリクローナル抗体を作製した。またeIF6と直接相互作用するプロテアソームサブユニットの同定を in vitro transcription/translationを用いた方法と大腸菌を用いたリコンビナントタンパク質作製などにより調べている途中である。 3. eIF6の機能減弱時における26Sプロテアソーム形成異常が、全般的なリボソーム機能異常によるものでないということを出芽酵母の変異株を用いて検証できた。 eIF6と同様にリボソーム生合成に関わるタンパク質の出芽酵母における変異株を用いてプロテアソーム活性を測定したところ、少なくとも調べた5つの変異株において eIF6での変異株において見られるようなプロテアソーム活性の低下は見られなかった。このことから eIF6は特異的にリボソーム生合成とプロテアソーム形成とに関わっている可能性が高いと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1. eIF6ノックダウンによるプロテアソーム形成異常の詳細な表現型解析として、 eIF6のノックダウン時に見られる異常なプロテアソーム形成中間体の構成成分を決定する。また既に知られているeIF6のリボソームに対する機能と新しく発見されたプロテアソームに対する機能とがどのように連携しているのかを知るための実験を行う。この目的のためにはeIF6の持つ機能を分離し個別に解析できるように点変異を持つeIF6を多数取得することが必要であり、新しいeIF6の変異アリルの作製とその変異体の表現型を観察する。 2. eIF6とプロテアソームサブユニットとの結合様式をはっきりさせる。さらにeIF6はプロテアソームサブユニットとリボソームサブユニットと3者で複合体を形成し得るのか、もしくはお互いに排他的なのかをeIF6の局在場所と合わせて調べる。リボソーム60S前駆体は核質で、プロテアソームは細胞質で形成されていると考えられており、eIF6が細胞内のどこで何と結合しているのか知ることは機能を知る上で重要と思われる。 3. eIF6は80Sリボソーム形成時に60Sサブユニットから乖離し80Sリボソーム形成におけるチェックポイントのような機能を持つ。出芽酵母Sdo1とRia1は出芽酵母eIF6の乖離を促進させるタンパク質であり、Sdo1のヒトオーソログSBDSの変異は膵外分泌異常と血球減少を主徴とするシュバッハマン・ダイアモンド症候群の原因となっていることが分かっている。この病気を含めリボソーム病と呼ばれる病気の責任遺伝子がプロテアソーム形成にも関与していないか変異体を作製して調べる。そして、eIF6以外にリボソームとプロテアソーム形成機構との間に関連がある分子を探索する。
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Research Products
(4 results)