2017 Fiscal Year Research-status Report
リボソーム生合成因子がプロテアソーム形成を制御する機構を解明する
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16K07342
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
八代田 英樹 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (20311425)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プロテアソーム / リボソーム / 出芽酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質合成を担うリボソームと選択的なタンパク質分解を担うプロテアソームはいずれも数十のサブユニットから構成される巨大な複合体である。プロテアソームの形成過程は近年明らかになってきたが、形成過程を促進、もしくは促進するような制御機構に関しては解析が未だ不十分である。申請者らはプロテアソーム形成に異常を示す出芽酵母の変異を探索し、リボソーム生合成に関わるTif6/eIF6の変異を得た。この遺伝学的関連を分子レベルで説明することを目指し、タンパク質合成とタンパク質分解という細胞内での2大イベントを連携させる仕組みに対する手がかりを得ることを目的として研究を行った。 1、Tif6/eIF6とプロテアソームとの関係の発見はTif6の発現減弱型変異であるtif6-DAmPとプロテアソームサブユニットPre9の欠損変異やプロテアソーム形成シャペロンUmp1欠損変異との二重変異によって強く増殖遅延が見られたことに由来する。今年度はさらに異なる遺伝学的相互作用も観察した。これらのことからTif6とユビキチン・プロテアソーム系はお互いに厳密な量的制御を受けていると思われた。 2、動物細胞のeIF6がプロテアソームによるプロセシングを受けている可能性を示した。プロセシングを受けたeIF6のみが、60Sリボソームとの相互作用が可能だとすると、この現象はリボソーム形成には正常なプロテアソーム機能が必要であり、タンパク質合成が行われるための基盤としてプロテアソームによる正常なタンパク質分解が必要である可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、遺伝学的相互作用としてUmp1もしくはユビキチン・プロテアソーム関連遺伝子の転写に広く関わるRpn4の欠損とtif6-DAmP変異とを組み合わせることでアミノ酸アナログであるアゼチジン2カルボン酸(AZC)の感受性が弱められることを発見した。またTif6を過剰発現させると増殖遅延を起こすが、同時にRpn4を過剰発現させると、この増殖遅延は抑圧される。これらのことからTif6とユビキチン・プロテアソーム系は厳密な量的制御を受けていると思われた。 2、eIF6のN末端がプロセシングを受けている可能性があることを発見した。eIF6のN末端、C末端のそれぞれにmycタグ、もしくはflagタグを付加したものを細胞内で発現させるとflag抗体では分子量の異なる2種類のeIF6が観察され、myc抗体ではflag抗体で認識された2種類の分子種のうち分子量の大きな方しか検出されない。さらにそのプロセシングはプロテアソーム阻害剤のボルテゾミブで抑制されることから、プロテアソーム活性に依存してeIF6のプロセシングが起きていることが示唆された。 3、ショ糖密度勾配遠心によって細胞抽出液を分画し、プロセシングを受けたeIF6と受けていないeIF6がどのフラクションに含まれるのか、リボソームの40S、60S、80S、ポリソームの分画位置と比較して調べた。その結果、発現させた大半のeIF6は40S以下のフラクションに分画され、一部のみが60Sリボソームと同じフラクションに分画されたが、60Sリボソームと同じフラクションに分画されたのはプロセシングを受けたeIF6だけだった。 以上を合わせてeIF6のリボソームにおける機能にプロテアソームが関与し、タンパク質合成とタンパク質分解とが相互に密接な機能調節を受けている可能性を明らかできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
1、酵母ツーハイブリッド法で観察されているeIF6とプロテアソームサブユニットとの結合が実際に動物細胞内でも検出できるかどうか確認する。プロテアソームサブユニットと結合できないeIF6の作製や、eIF6がリボソームサブユニット、もしくはプロテアソームサブユニットといつどこでどれくらい結合しているのか、リボソーム生合成を調節するシグナルとなっている栄養状態の違いに応じての変化などを調べる。 2、eIF6のプロセシングの意義を明らかにする。プロセシングが現在予想されるようにプロテアソーム活性によるものなのか、またプロセシングされたeIF6だけが60Sに局在する仕組みと生物学的意義を調べる。プロセシングされないeIF6、もしくは最初からプロセシングされたeIF6を発現させてプロテアソームやリボソーム形成に異常が生じないか調べる。 3、Tif6/eIF6は80Sリボソーム形成時に60Sサブユニットから乖離し80Sリボソーム形成におけるチェックポイントのような機能を持つ。出芽酵母Sdo1とRia1はTif6の乖離を促進させるタンパク質であり、平成28年度にこれらの遺伝子変異株でもプロテアソーム形成に異常が見つかる可能性が高いと予想している。Sdo1のヒトオーソログSBDSの変異は膵外分泌異常と血球減少を主徴とするシュバッハマン・ダイアモンド症候群の原因となっていることが分かっており、この病気を含めリボソーム病と呼ばれる病気の責任遺伝子がプロテアソーム形成にも関与していないか変異体を作製して調べる。そして、Tif6/eIF6以外に広くリボソームとプロテアソーム形成機構との間に関連がないかどうかを探る。
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Research Products
(5 results)