2017 Fiscal Year Research-status Report
糸球体濾過障壁の恒常性維持におけるGpr116受容体の作用機構
Project/Area Number |
16K07344
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 信大 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (80361765)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 血管内皮 / 受容体 / 細胞内情報伝達 / 糸球体 |
Outline of Annual Research Achievements |
Gpr116(Adgrf5またはIg-Heptaとも呼ばれる)は7回膜貫通型受容体でリガンド未知のオーファン受容体である。最近の研究により,Gpr116が肺における肺胞サーファクタントの量や免疫の恒常性維持に働くことが知られているが,申請者はこれまでに,Gpr116が腎臓の糸球体ろ過障壁の構造的,機能的な維持に機能していることを示唆する結果を得てきた。本年度では前年度に引き続き,Gpr116欠損マウスの糸球体血管内皮細胞における発現変動遺伝子の同定を行った。その結果,炎症初期に発現誘導が引き起こされることが知られている炎症性因子の発現上昇がGpr116欠損糸球体血管内皮細胞で生じていることを定量PCR解析およびウエスタンブロット解析により認めた。この炎症性因子の発現上昇はマウスより単離した肺毛細血管細胞においてもGpr116欠損によって引き起こされていることを認めたことから,Gpr116が毛細血管細胞において炎症応答を調節する働きがあることが示唆された。 また,Gpr116の細胞内シグナル伝達経路を特定するために,Gpr116およびその変異体を恒常的に発現する細胞株を作成してそれらのシグナル伝達の状態(シグナル伝達分子のリン酸化状態など)をウエスタンブロット法により解析した。MAPKシグナリングなど代表的な経路のうちGpr116の過剰発現によって活性化状態に変動を示す経路の候補を同定することができた。今後,この経路が実際にGpr116欠損によって影響を受けて下流遺伝子発現に影響を及ぼしているかを確認する必要がある。 免疫電顕解析によりGpr116が血管内腔側に局在することを認めたことから,リガンド探索として,流れ刺激(せん断応力)による活性化の可能性について検討した。しかしながら,Gpr116のシグナル伝達に影響を与えることを示す結果は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Gpr116欠損により影響を受ける遺伝子の特定をして,Gpr116が炎症との関連があるという生理的な機能を示唆する結果が得られた。また,細胞内シグナル伝達についても候補のシグナル経路を見出した。リガンド探索では申請者の仮説(流れ刺激応答)を支持する結果は得られなかったが,分子内プロセシング等による活性化など別の可能性を検討する方向に切り替えている。
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Strategy for Future Research Activity |
候補のシグナル経路がGpr116の下流経路であるか検証する必要がある。変異体Gpr116を用いた解析,Gpr116のリン酸化状態やシグナル分子との相互作用,Gpr116の細胞内局在の変化など解析するとともに,Gpr116欠損血管内皮細胞や初代血管内皮細胞に対するGpr116のノックダウンを行うことでシグナル経路や下流遺伝子発現への変動についても解析を行う予定である。Gpr116の活性化機構を明らかにするために,引き続きリガンド探索や分子内プロセシング等による活性化の可能性について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)当該年度の研究遂行にあたり,低価格の消耗品の購入によるコストダウンを行ったため。
(使用計画)次年度では,初代血管内皮細胞を用いた機能解析を中心に行うため,高額な細胞単離のための消耗品(磁気ビーズ,抗体,血清)の購入に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] FNDC4 Promotes Brown-Like Adipocyte Formation and Glucose Clearance via an Orphan G-protein Coupled Receptor2017
Author(s)
Xiaochuan Ma, Madeleen Bosma, Olga Shilkova, Maude Giroud, Juan C Higareda-Almaraz, Venetia Bazioti, Tilo Wuensch, Malin Elven, Steven Seaman, Olli Ritvos, Nobuhiro Nakamura, Shigehisa Hirose, Martin Irmler, Johannes Beckers, Robert Janowski, Dierk Niessing, Brad ST Croix, Tarja Niemi, Markku Taittonen, 他8名
Organizer
American Diabetes Association
Int'l Joint Research
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