2017 Fiscal Year Research-status Report
ショウジョウバエ初代培養血球細胞で観察される細胞キラリティの形成機構の解明
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16K07349
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
笹村 剛司 大阪大学, 理学研究科, 助教 (70647487)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フィロポディア / アクチン / 細胞キラリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに私は、新規のショウジョウバエ血球細胞の細胞キラリティの形成メカニズムを明らかにするために、アクチンの動態を観察し、フィロポディアの内部のアクチンフィラメントが回転していることを見出しました。この結果から、私はアクチンフィラメントの回転が細胞キラリティを生み出しているという仮説をたて、それについて検証するために、フィロポディアアクチンの回転方向の決定を試みました。しかしながら、通常の共焦点顕微鏡では、z軸(高さ)方向の解像度が不十分なため、回転方向は決定できませんでした。そこで私は、4つの方法により回転方向の決定を試みました。(1)高解像度の画像が習得できる2光子顕微鏡および構造化照明顕微鏡による撮影、(2)青色光により、蛍光の波長を変えることができるPhotoconvertible GFPを用い、フィロポディアの一部のみを標識する方法、(3)GFP-アクチンを低レベルで発現させ、一分子のアクチンの挙動を観察する方法、(4)微細な山型の基板(マイクロパターン)上に細胞を培養することで、斜め方向からの観察をし、高さ方向の解像度を向上させる方法、になります。その結果、(4)のマイクロパターンを用いた方法により、フィロポディアアクチンの回転方向を決定することができました。これまで、フィロポディアアクチンが回転している可能性は示唆されてきましたが、実際に回転方向を決定したのは、これが世界で初めてです。これにより、フィロポディアアクチンが回転することにより、細胞キラリティが生じているという仮説を検証していくことが可能になったという点でも、大きな進展になります。今後は、この方法により、キラリティが反転するMyo31DF突然変異体細胞などのフィロポディアアクチンの回転方向を明らかにすることで、細胞キラリティ形成の分子機構に迫っていこうと考えています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私はフィロポディアアクチンの回転方向を決定するために、以下の4種類の実験を行いました。それらの結果から研究が予定通り、順調に進んでいると考えています (1)高解像度な画像を習得できる二光子顕微鏡および構造化照明顕微鏡(SIM)による観察。二光子顕微鏡の使用では、時間分解能が数倍向上しましたが、z軸方向の解像度はあまり向上しなかったため、回転方向の決定には至りませんでした。そこで、SIMにより観察を行いましたが、それでもまだ解像度が不十分で回転方向の決定はできませんでした。 (2)蛍光強度の高いPhotoconvertible GFPであるmEOS3.2とlifeactとの融合タンパク質を血球細胞に発現し、フィロポディアの一部のみに青色光を照射することで、回転方向の決定を試みました。しかしながら、lifeactは速やかに拡散してしまい、回転方向の決定には至りませんでした。 (3)GFP-アクチンをごく低濃度で発現し、一分子解析を行なうことで回転方向の決定を試みました。その結果、一分子のGFPアクチンのフィロポディア内での動態を観察することに成功しました。しかしながら、回転方向を決定するために十分な数のサンプルを得られていないため、以下の(4)の方法で不十分であった場合、この方法により回転方向の決定を行うことを考えています。 (4)間隔や高さが20μm程度の山型の繰り返し微小構造の金型を作成し、樹脂に転写後、細胞を培養しました。山型の頂点の角度を4種類変えたものを作成し、検討した結果、角度が22.5°の場合最も回転が検出しやすいことが明らかになりました。現在まで野生型の細胞における36のフィロポディアアクチンの回転方向を決定し、外側から見て、時計回り回転のものが42%、反時計回りが58%という結果が出ています。
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Strategy for Future Research Activity |
フィロポディデア内のアクチンの回転方向を決定できる方法を見出したことで、今後の課題は、この回転方向にキラリティがあるかどうかを決定することです。現在までに36のフィロポディアアクチンの回転方向を決定しましたが、有意差があるかどうかを検証するためには、100前後のアクチンの回転方向を決定する必要があります。まずはこれを行っていきたいと考えています。そして次に、細胞キラリティが反転するMyo31DF突然変異体細胞そしてMyo31DF強制発現細胞でのフィロポディアアクチンの回転方向を決定することで、フィロポディアアクチンの回転が血球細胞のキラリティを生じているという仮説を検証していきます。 同時に取り組んで行かなくてはいけない課題が、フィロポディアアクチンの回転の分子機構です。フィロポディアアクチンの形成や制御機構は詳細に明らかになっています。それらの分子のどれが細胞キラリティの形成に機能しているかをRNAiによるノックダウンにより検証していきます。まずは、それぞれのRNAiが中心体の移動のキラリティを変化させるかについて検証します。そして次に、影響を与えたRNAiがフィロポディアアクチンの回転方向に影響を与えるかを検証します。これらの実験により、どのような分子が、キラリティ形成に重要であるかを明らかにしていきたいと考えています。 私は血球細胞のキラリティがMyo31DFによって制御されていることを明らかにしており、Myo31DFの血球細胞における動態は、細胞キラリティの形成機構を明らかにする上で非常に重要であると考えられます。現在までにMyo31DFの一分子観察を行ってきましたが、それだけで分子全体の挙動を追うことが困難です。そこで私はMyo31DF-GFPのノックイン形質転換体を作成し、その挙動を観察することで血球細胞内におけるMyo31DFの動態を明らかにしようと考えています。
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Causes of Carryover |
当該年度に計画していた実験を次年度にも行うため。物品費として使用する。
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Research Products
(3 results)