2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K07352
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
祐村 恵彦 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (70183986)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 細胞膜損傷 / Caイオン / アネキシン / シグナル / アクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞は常に外界の物理的・化学的ストレスにさらされており,細胞膜の損傷がしばしば起こるが,細胞にはそのような細胞膜の損傷を修復する機構が存在する。また,細胞外の物質を人為的に細胞内に導入するエレクトロポレーションなどの方法は,この修復機構に依存している。本研究では,独自に新規開発した,細胞膜だけにピンポイントで穴をあけるレーザーポレーション法を用いて細胞膜に穿孔損傷を与え,その修復過程に形成される修復装置の分子構成,構造,シグナル制御機構を明らかにする。これらの研究成果は,関連する疾病の治療に役立つだけでなく,高効率な細胞内への外来物質導入装置の開発にもつながると考えている。細胞膜だけにピンポイントで穴をあけるレーザーポレーション法をさらに発展させて,さらに簡便で効率のよい方法を見いだした。この新規方法については,特許申請中である。この方法により,細胞膜に穴をあける最適条件を設定できた。細胞外に蛍光色素を入れて,レーザーポレーションを行なうことで,蛍光色素の細胞内への流入から細胞膜に開いた穴の開閉の動態を定量化することができた。また,細胞に蛍光性CaプローブD-GCaMPを発現させることで,細胞外から細胞膜の損傷穴を通って細胞質へのCaイオンの流入が起きていることを可視化し,さらに定量化できた。また外液のCaイオンを除くと細胞膜の損傷の治癒が起こらないことも明らかになり,損傷穴からのCaイオンの流入が損傷治癒の必須であることが分かった。さらに,Ca依存的に損傷穴にリクルートされてくるタンパク質としてアネキシンC1を新たに同定した。細胞性粘菌にはアネキシン遺伝子は2種しかないが,もう1つのアネキシンC2について現在検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞膜だけにピンポイントで穴をあけるレーザーポレーション法をさらに発展させて,さらに簡便で効率のよい方法を見いだした。この新規方法については,特許申請中である。この方法により,細胞膜に穴をあける最適条件を設定できた。細胞外に蛍光色素を入れて,レーザーポレーションを行なうことで,蛍光色素の細胞内への流入から細胞膜に開いた穴の開閉の動態を定量化することができた。また,細胞に蛍光性CaプローブD-GCaMPを発現させることで,細胞外から細胞膜の損傷穴を通って細胞質へのCaイオンの流入が起きていることを可視化し,さらに定量化できた。また外液のCaイオンを除くと細胞膜の損傷の治癒が起こらないことも明らかになり,損傷穴からのCaイオンの流入が損傷治癒の必須であることが分かった。さらに,傷修復の遺伝学的な研究から,Ca依存的に損傷穴にリクルートされてくるタンパク質としてアネキシンC1を新たに同定した。細胞性粘菌にはアネキシン遺伝子は2種しかないが,もう1つのアネキシンC2について現在検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き,傷修復の遺伝学的な研究を行なって行く。細胞性粘菌のコミュニティでは,シグナル関連タンパク質,アクチン関連タンパク質,膜動態関連タンパク質などのほとんどの欠損細胞が利用できる。これらの変異体にGFP-アクチン繊維マーカー及びGFP-膜タンパク質を発現させ,レーザーによる膜損傷実験を行い,アクチンの集積度と傷の開口時間を定量化し,傷修復に関連するタンパク質をスクリーニングする。これらに異常が見られた株については,その遺伝子とのGFP融合タンパク質コンストラクトを作成し細胞に発現させ,傷部に集合するかを調べ,集合した場合は経時変化を調べ,それらを時系列で比較する。以上の方法により,傷修復に関与するタンパク質を網羅的に同定するとともに,それらがどのような順序で関与するか時系列を明らかにする。また,傷の修復機構として2つのモデルを考えている。1)アクチンが細胞膜を閉じるのに直接関与している。2)細胞内小胞がアクチン集合を利用して傷部に集まり,細胞膜と融合することで修復している。膜動態関連タンパク質変異株を用いた研究から結果が得られるかもしれないが,上記の仮説についての検証を別途行なう。脂質の蛍光標識アナログを用いてまず細胞膜を染色する。小胞が融合するのであれば,染色されていない細胞内小胞が細胞膜と融合すると,その部分は蛍光が減少するはずである。
|
Causes of Carryover |
研究計画の都合で,先に後でやることになっていた実験から始めたので,計画していた画像処理のアルバイトの費用などがまだ支出できないでいる。最終年に使用したいと考えている。
|
Research Products
(9 results)