2016 Fiscal Year Research-status Report
質量分析イメージング法による線虫C.エレガンスのシングルセルレベル脂質マッピング
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16K07355
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Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
木村 芳滋 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 准教授 (90274703)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イメージングマススペクトロメトリー / IMS / TOF-SIMS / メタボローム / 線虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
線虫C.エレガンスは成虫でも体長1ミリ前後と,質量分析イメージング法 (IMS)で解析されてきた材料としては非常に小さく,これまで我々が行ってきたマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法によるイメージングでは解像度が十分ではなく,発現細胞・組織の特定が困難であった.そこで本研究では高解像度での解析が可能な飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)法によるイメージングの導入を行う.TOF-SIMS法は特に解像度に優れており,1μm以下の解像度で生体分子の局在情報が得られる.本研究ではすべての細胞の位置と形が特定されている線虫C.エレガンスを用いてこれまで不可能であったシングルセルレベルで脂質の発現マッピングを行い,その環境変異と遺伝学的変異による変化プロファイルを明らかにすることで,これまでほとんどわかっていない脂質の局在の機能とその成立メカニズムを明らかにし,将来のヒトを用いた医学応用のための基礎技術の確立を目指す. 本年度は研究の初年度として,新たに成蹊大学理工学部 青柳里果教授との共同研究を開始した.解析機器はアルバックファイ社のシステムに加えて新たにION-TOF社のTOF-SIMSシステムを用いた.予備的なサンプル準備法の条件決定の結果,軽度(30分程度)のパラホルムアルデヒド(PFA)固定が,脂肪酸などの生体分子検出に最適であることがわかった.線虫をPFA固定後,凍結切片を作製して,計測を行うことで,生体由来の脂肪酸を効率よく検出することができた.今後は変異体や培養条件の変化における生体分子の発現量や発現パターンの変化を観察するとともにより細かい発現細胞・組織の特定を試みる予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノメーターレベルの高解像度を実現するTOF-SIMSを線虫に導入し,細胞ごとの生体分子の分布を解析することを目指し,サンプルの準備法の検討をおこなった.安定度の高いパラホルムアルデヒド(PFA)固定後の凍結切片法の条件を検討し,最適な条件を決定することができた.またこれまでのアルバックファイ社のシステムに加えて ION-TOF社のシステムを導入しより感度の高い解析ができるようになった.
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Strategy for Future Research Activity |
PFA固定と凍結切片法を組み合わせた方法でTOF-SIMSに適したサンプルを作成し,アルバックファイ社,ION-TOF社のシステムに加えて最近英国NPLで開発されたOrbiSIMSのイメージングシステムを用いて,より精細な解析を行う. 野生型と脂質合成変異体の比較,温度などの環境条件の変化を検討することで脂質の細胞内局在の生物学的役割を明らかにする.個々の脂質の分布パターンを炭素鎖の長さと二重結合の数まで区別して解析することは IMS で のみ可能な技術である. 具体的には以下の順序で TOF-SIMS の高解像度イメージング解析を行う. a)生体膜の脂質の分布図を器官ごとまた可能であれば細胞ごとに比較する. b)脂質の構成要素である脂肪酸合成の変異体(fat 遺伝子)での発現パターンの変化を解析し, LC-MS など他の方法で得られたデータと比較検討する.
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Causes of Carryover |
物品費の中で線虫の新しい系統の購入に関する費用と,線虫の維持管理に関する費用が予定を下回ったため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に物品費として線虫の維持管理に関する費用として利用する予定である.
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