2019 Fiscal Year Research-status Report
メダカ突然変異体群の解析による始原生殖細胞の移動を制御する新しい分子機構の解明
Project/Area Number |
16K07381
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
笹土 隆雄 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (90511204)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2021-03-31
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Keywords | 始原生殖細胞 / 細胞移動 / ケモカイン / ヒト疾患関連遺伝子 / ヒト遺伝疾患 / 疾患モデル動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
始原生殖細胞の移動に異常が見られる2種のメダカ突然変異体(kamigamo, shimogamo)について、これまでの遺伝学的な解析により、それぞれヒトに奇形を生じさせる先天性小児疾患の原因として知られる転写調節因子であることを突き止めている。当該2019(R1)年度の当初計画においては、これまでの進捗の遅れを挽回する為に研究体制を見直し、新たに2名の共同研究者を加えて、助言・協力を得ながら研究を実施した。shimogamo遺伝子については完全長cDNAを既に入手している為に、当該年度はshimogamoのパラログ遺伝子とkamigamo遺伝子の全長分のcDNAをクローニングし、それぞれ約9kb, 7kbの塩基配列を明らかにした。kamigamo遺伝子については、中央部の構造を欠き約1/3の長さのものがあることが当該年度の後半に分かり、当初予想していなかったこの転写産物の発現等の性状を明らかにする為に、補助事業期間を1年間延長して解析を続行する。更に、研究代表者の所属の異動に伴う飼育施設の規模的な制限や研究補助人材の不足といった研究環境の制約による計画の遅れを挽回する為に、自動化機器であるDNA電気泳動装置(島津製作所・MultiNA MCE-202)を導入し、DNAクローニングや個体の遺伝子タイピング等の加速と省力化によって、前述の研究環境の制約の克服を図る研究計画の見直しを行った。shimogamoパラログのノックアウトメダカの解析、kamigamo, shimogamoのホールマウントin situハイブリダイゼーション解析を継続し、当研究の論文化を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者の所属機関の異動に伴う飼育施設の規模的な制限や、研究補助人材の不足といった研究環境の制約により、引き続き当初の計画よりも遅れが生じている。当該2019(R1)年度においてはこれを挽回する為に、企業による解析業務の委託を用いた研究の効率化を検討したが、適当・適切な人員・サービスを見つけることが出来なかった。そこで、DNA電気泳動の自動化装置を導入し、DNAクローニングや個体の遺伝子タイピング等の加速と省力化によって、前述の研究環境の制約の克服を図る研究計画の見直しを図った。なお、2019年度においてはこれまでの進捗の遅れを挽回する為に研究体制を見直し、新たに2名の共同研究者を加えて、助言・協力を得ながら研究を実施し、当初予期していなかったkamigamo遺伝子の時期特異的な選択的スプライシングの可能性が考えられる結果を得た為に、補助事業期間の延長によりこの転写産物の発現等の性状を明らかにする。更に、shimogamoパラログのノックアウトメダカの解析や、kamigamo, shimogamoのホールマウントin situハイブリダイゼーション解析を引き続き行い、当該研究課題の論文化を達成する予定である。ただし、2019年度末から新型コロナウイルス感染症拡大防止対策により所属機関の入構に次第に困難が生じていた状況であったが、2020(R2)年度当初の緊急事態宣言以降においては原則入構禁止措置が図られた為に、2019年度末から2020年度当初における課題の進捗に困難が生じている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
kamigamo遺伝子については時期特異的な選択的スプライシングの可能性が考えられた為に、RT-PCR等によりこれを確かめる。更に、引き続き2名の共同研究者の助言・協力を得ながら下記の実験を行い、この2つの遺伝子が始原生殖細胞の移動を制御する機構について論文化を行う。2020(R2)年度当初においては新型コロナウイルス感染症拡大防止対策により共同研究者の所属機関を含めて入構制限措置が取られた為に、年度初旬の計画の変更を余儀なくされているところであるが、適宜計画の見直しを図りながら当研究を推進する。 ・始原生殖細胞の移動期において、shimogamoおよびそのパラログやkamigamo遺伝子が発現している組織を、ホールマウントin situ ハイブリダイゼーションによって調べる。 ・転写調節因子と考えられるkamigamo、及び、shimogamoが、既知のケモカイン関連遺伝子の発現制御に関わっているのかどうかを調べる。つまり、これまでに始原生殖細胞の移動への関与が知られている既知のケモカインとその受容体遺伝子、cxcl12a/sdf1a、cxcl12b/sdf1b、cxcr4b、cxcr7等について、各変異体胚におけるそれぞれの遺伝子の発現を、ホールマウントin situハイブリダイゼーションによって調べる。 ・CRISPR/Cas9システムを用いてshimogamoノックアウトメダカを作製し、先の大規模変異体スクリーニングにおいて得られたshimogamo変異との相補性試験を行う。 ・CRISPR/Cas9システムを用いてshimogamoパラログのノックアウトメダカを作製し、この遺伝子が始原生殖細胞の移動に関わっているのかどうかを調べる。
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Causes of Carryover |
補助事業期間を延長する必要が生じ、その実験に必要な試薬・消耗品費を次年度に繰り越して使用する。
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