2017 Fiscal Year Research-status Report
ニワトリ中胚葉細胞の遊走をモデルとした3D細胞集団運動の定量的解析
Project/Area Number |
16K07385
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
仲矢 由紀子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 研究員 (70415256)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 細胞遊走 / ニワトリ胚 / 中胚葉 / N-cadherin / 定量解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニワトリ初期胚では、からだの中央に位置する原条を起点として、間充織性の中胚葉細胞が、エピブラスト層と内胚葉層に挟まれた空間を遊走し中胚葉組織が形成される。前年度において、遊走する中胚葉細胞はN-cadherinなどの接着分子を介して3次元的に接着することを明らかにした。そこで平成29年度では、細胞外ドメインを欠失したN-cadherinの変異体(ドミナントネガティブ型)を作製し、細胞遊走に対する機能解析を行った。その結果、N-cadherin 変異体を発現する細胞では、内在性のN-cadherin、P-cadherin、β-catenin等の細胞接着に関わる分子が、細胞質内に蓄積し、膜への局在が認められなかった。さらに、N-cadherin 変異体発現細胞の動きをライブイメージングで詳細に観察したところ、正常細胞とほぼ同じ速度で移動するが、正常細胞よりも始点ー終点間の距離が短く、直進性が低く、よりランダムな方向に運動した。これらの結果から、N-cadherinを介した細胞間の接着は、細胞遊走に対して何らかの影響をもつことが示唆された。 次に、細胞質がGFPで標識されたトランスジェニック(TG)ニワトリを用いてライブイメージングを行い、中胚葉細胞がどのように相互作用しながら遊走するのか、その細胞挙動を詳細に解析した。これまでに、組織内である程度の密度で存在する細胞は、特にルールも秩序なく遊走すると考えられていたが、実際には、3次元的な網目様の構造を形成しながら纏まって移動することがわかった。また、この網目の構造は安定しておらず、隣接する細胞と接着をつなぎ変え、網構造を次々に再編しながら移動していた。このようなダイナミックな網構造の形成は、中胚葉細胞の遊走に重要なしくみであると考え、現在、これに対するN-cadherinの機能解析と、この細胞運動を模倣する数理モデルの構築に取り組んでいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、中胚葉細胞の蛍光標識はエレクトロポレーション法によって行っていたが、全ての細胞を標識できる方法ではないので、可視化できていない中胚葉細胞の挙動がわからず、細胞集団運動を理解するためには多くの課題が残されていた。 29年度は、全身の細胞がGFPでラベルされたトランスジェニック(TG)ニワトリを入手できることになり、中胚葉組織のほぼすべての細胞の動きを可視化でき、細胞の集団移動のしくみに対する理解が大いに進んだ。各細胞の3次元的な繋がりもライブで観察可能となった。また、N-cadherin等の機能解析実験も進展しており、ほぼ申請時の研究計画どおりに進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、胚の透明化や高解像度のライブイメージング技術を発展させ、ニワトリ初期胚の中胚葉形成において、間充織性の中胚葉細胞が網目状に繋がったグループを形成して移動するという新しい現象を発見することができた。今後は、この特徴的な網目構造の形成と再編成の分子メカニズム、さらにこの細胞遊走の様式が中胚葉の組織形成やその後の細胞分化にどのように影響するかについて、実験と数理モデルの双方向から明らかにする。技術的には、N-cadherinやその他の細胞極性に役割をもつ遺伝子の機能をノックダウンするために、CRISPER/Cas9のシステムを確立させる。また、in vitro系として、中胚葉細胞の初代培養系を立ち上げ、細胞骨格の再編成や接着班の形成など、in vivo系では観察が困難な細胞生物学的な側面についての検討も加える予定である。
|
Causes of Carryover |
(理由) 未使用額が生じた要因は、研究室内の予算が来年度は減額される見込みとなったことである。予算執行計画が変更されるなどの不測の事態に備えて、次年度に持ち越すことにした。 (使用計画) 未使用額を合わせた次年度経費は、エレクトロポレーション時に使用するインジェクターの購入にあてるほか、ニワトリ培養に関する試薬消耗品、施設共通機器(顕微鏡等)の使用料、今年度から始めるin vitro実験に使用する試薬や消耗品など、研究の進捗に合わせて全額使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)