2016 Fiscal Year Research-status Report
シロイヌナズナ胚における子葉形成機構の解析~調節遺伝子と細胞と器官形態との関係
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16K07401
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
相田 光宏 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特任准教授 (90311787)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 発生 / 転写因子 / 形態形成 / 葉 / 境界部 / 対称性 / オーキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
シロイヌナズナ胚の個々の細胞について、その立体的な形状と配置を把握するために、胚の透明化と染色法について検討を行った。その結果、従来のmPS-PI法では染色が弱く、サンプルごとの染色具合もきわめてばらつきが大きいため、効率的な画像取得には不向きであることが分かった。一方、栗原らによって報告されたClearSee法による透明化と細胞壁の染色剤であるカルコフロールによる染色を組み合わせた手法(Kurihara et al., 2015)を試みたところ、初期球状胚から中期心臓胚まで、試料の深部まできわめて明瞭な蛍光画像を得ることに成功した。またこの方法で調製したサンプルではGFPの蛍光も良好に観察できることも分かった。 この手法を用いて各ステージの多数の胚についてスタック画像を取得し、立体構築を行った。野生型胚では子葉形成に伴って、胚頂端部が横方向に大きく拡大し、それまで放射相称型だった胚の形状が二放射相称へと変換することが分かった。一方、子葉境界部の調節因子であるCUC2およびCUC3遺伝子の二重ノックアウト変異体では、胚頂端部の横方向への拡大は抑えられ、逆に前後方向への拡大が促進されており、結果として子葉形成が進んでも放射相称に近い形状を示していた。また、子葉原基のマーカーであるオーキシン応答性リポーターDR5-GFPおよび子葉境界部のマーカーであるCUC1-GFPの発現について調べたところ、二重変異体ではいずれのマーカーの発現も著しく乱れていることが明らかになった。 以上の結果から、CUC2とCUC3は胚頂端部の左右方向への拡大を促進し、前後方向への成長を抑制すること、および胚の二放射相称性の確立に必要であることが示唆された。また、これらの遺伝子は正常なオーキシンの蓄積部位の形成や、CUC1遺伝子の正常な発現パターンにも必須であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
胚の立体形状の取得にきわめて有効な透明化手法を見いだした。またこの方法を用いて、子葉境界部の調節因子であるCUC2およびCUC3について、これまで知られていなかった新しい機能を見いだすことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度に確立した胚の透明化・細胞壁染色手法により、CUC遺伝子の過剰発現体、異所的発現体についても同様の形態解析を行うことでCUC遺伝子の胚における機能を明らかにする。またオーキシンの生合成遺伝子の発現や、オーキシン極性輸送関連因子、表層微小管のマーカーを用いて、胚頂端部の形態形成に関わる因子の変化の特徴を明らかにするとともに、これらの因子に対するCUC遺伝子の影響を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
遺伝子組換え植物の漏出事故により、組換え植物を用いた実験を平成28年度5月~9月の期間中、行うことができなかった。そのため、組換え遺伝子を含む突然変異体やマーカー系統の観察、および掛け合わせ実験を進めることができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
各種のマーカー遺伝子のcuc2 cuc3二重変異体およびCUC2過剰発現体への導入を進める。
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Research Products
(1 results)