2016 Fiscal Year Research-status Report
NIMA関連キナーゼによる植物細胞の極性伸長制御機構の解明
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16K07403
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
本瀬 宏康 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (70342863)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 微小管 / 細胞極性 / リン酸化 / キナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
1)シロイヌナズナNEK6、NEK遺伝子ファミリーの機能解析:nek6変異体の微小管動態を詳細に解析した。nek6変異体では細胞膜から剥がれて変形する微小管が残存し、伸長を続けることが明らかになった。NEK6は細胞膜から離脱して異常な挙動を示す微小管を脱重合して除くことにより、微小管配向を整え、細胞の伸長極性に寄与すると考えられる。 エストラジオール添加により効率よくNEK6タンパク質を誘導できる新規な誘導株の作成に成功した。改良型誘導株ではNEK6の蓄積と形態異常が顕著で、微小管の脱重合が起こることが示された。また、この株を用いてチューブリンなどのリン酸化を確認しつつある。更に、NEK6によるチューブリンリン酸化部位5つについてアミノ酸置換を導入して微小管への取り込みを解析し、特に1つの部位が重要であることを示した。 ENS-LyonのHamant博士と共同研究を行った。NEK6は微小管の過剰な張力応答を抑制し、細胞間の協調的な微小管配向を可能にすることが示された。また、シロイヌナズナNEKファミリーについて解析を進め、その発現パターンを明らかにすると共に、細胞伸長における機能的な冗長性を示した。これらの研究成果をまとめ、論文を投稿中である。 2)コケNEKの解析:タイムラプス観察から、ゼニゴケMpNEK1破壊株では仮根の伸長方向が安定せず、ジグザグに成長することが示された。また、仮根伸長時のMpNEK1-Citrineの動態を明らかにした。MpNEK1破壊株などを用いて、MpNEK1の下流因子を同定しつつある。ヒメツリガネゴケPpNEK1についても変異体と細胞内動態を解析中である。更に、ゼニゴケ微小管関連遺伝子の変異体を作出し、表現型を解析した。これまでに扁平な葉状体の形成に欠損を示す変異体を5種類、仮根の異常を示す変異体を2種類作成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
nek6変異体の微小管動態を詳細に解析し、NEK6が細胞膜からはがれて変形する微小管を削除することが明らかになった。これにより、異常な微小管が除かれ、細胞が一定の方向に伸長することができると考えられ、微小管制御の新たな側面を明らかにすることができた。また、NEK6タンパク質を効率よく発現誘導することができる新規な誘導株の作成に成功した。この改良型誘導株は画期的であり、下流因子の同定など、今後の研究の強力なツールとなる。更に、NEK6の新たな機能として、個々の細胞の過剰な張力応答を抑制することが明らかになった。このことは、NEK6が張力(メカニカルストレス)に応答した微小管配向を抑制し、組織全体の微小管配向を整えることを意味しており、今後の研究展開が期待できる。ゼニゴケについては、MpNEK1の機能解析を含めて順調に研究が進展しており、論文を準備中である。特に、微小管関連遺伝子の解析が進んでおり、ゼニゴケの形態形成における包括的な理解につながると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はNEK6誘導株を用いて、成長極性におけるNEK6の機能を解析すると共に、チューブリンや微小管結合タンパク質のリン酸化を詳細に解析する。また、張力に応答した微小管配向をNEK6がどのように抑制するのかについて、変異体や微小管のイメージングを組み合わせて明らかにする。更に、シロイヌナズナNEKファミリーやゼニゴケ・ヒメツリガネゴケNEKについても機能解析を進める。これまでに、ゼニゴケ微小管関連遺伝子の解析が進んでおり、作成した変異体の表現型をより詳細に解析する。また、これら微小管関連タンパク質の細胞内動態や相互作用を解析し、細胞分裂や細胞伸長における機能を解明する。
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Causes of Carryover |
チューブリンの特異的なリン酸化を認識する抗リン酸化チューブリン抗体の作成を業者に依頼しているが、作成に時間を要するため納品が次年度にずれ込んだ。そのため、抗体作製費用として、次年度に繰り越しを行った。また、投稿中の論文がリジェクトになり、別な雑誌に投稿することになった。そのため、論文の出版が次年度になり、投稿・出版費用を次年度使用額として繰り越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
抗リン酸化チューブリン抗体の作成費用として約42万円を6月までに使用予定である。論文の投稿・出版費用として約20万円を予定している。
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Research Products
(13 results)