2017 Fiscal Year Research-status Report
NIMA関連キナーゼによる植物細胞の極性伸長制御機構の解明
Project/Area Number |
16K07403
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
本瀬 宏康 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (70342863)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 極性成長 / 先端成長 / 微小管 / キナーゼ / シロイヌナズナ / ゼニゴケ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物細胞の伸長方向制御機構を明らかにするため、シロイヌナズナNIMA関連キナーゼ6(NEK6)と、そのオルソログであるゼニゴケMpNEK1の解析を行った。シロイヌナズナnek6変異体の成長解析から、NEK6は異常な伸長を抑制するのに加えて、伸長自体を促進する2つの機能を持つことがわかった。nek6変異体の微小管観察とNEK6の細胞内動態から、NEK6は微小管の退縮末端に局在し、細胞膜からはがれて変形した微小管を取り除く働きがあることが示された。また、NEK6はbeta-チューブリンの5つのSer/Thr残基をリン酸化し、微小管を脱重合していることが示唆された。以上より、NEK6はチューブリンをリン酸化して変形した微小管を除去することで、微小管配向を整え、方向性のある細胞伸長を可能にしていると考えられる(Takatani et al. 2017)。 ゼニゴケとヒメツリガネゴケのNEK遺伝子をクローニングし、それぞれMpNEK1、PpNEK1と名付けた。いずれのコケ植物もNEK遺伝子を1つだけ持つことがわかった。ゼニゴケMpNEK1の遺伝子破壊株を作出したところ、先端成長を行い、フィラメント状に伸長する仮根細胞の伸長方向がランダムになっており、ジグザグやらせん状の異常な形態を示した。MpNEK1は先端成長を行っている仮根先端部に存在し、微小管上に局在していた。Mpnek1破壊株の微小管観察と微小管阻害剤実験から、MpNEK1は仮根先端部の微小管を不安定化し、仮根の伸長方向を安定化することが示唆された。また、MpNEK1はシロイヌナズナnek6変異体の表現型を相補し、in vitroでチューブリンをリン酸化することから、陸上植物のNEKの機能は進化的に保存されていると考えられる(Otani et al. 2018)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナNIMA関連キナーゼ6(NEK6)がチューブリンをリン酸化し、変形した微小管を除去することで、微小管配向を整え、方向性のある細胞伸長を促進することを示した(Takatani et al. 2017)。植物の微小管がどのように整列するのか未だ不明な点が多いが、この研究により、変形した微小管の除去という新たなメカニズムを提唱することができた。また、ゼニゴケMpNEK1が仮根細胞の成長方向を制御することを初めて明らかにし、細胞伸長におけるNEKの機能が進化的に保存されていることを示した(Otani et al. 2018)。仮根細胞は、初期の陸上植物において祖先的な根として機能したと考えられており、水分や養分の吸収・植物体の土壌への固定を行っている。NEKは、初期の陸上植物において仮根の形成に関与するように進化したのかもしれない。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、シロイヌナズナNEK6によりリン酸化されるタンパク質を網羅的に同定し、その機能を明らかにする。また、NEK6がメカニカルフィードバック機構を介して、茎や根などの器官の伸長に関わることが明らかになっており、論文として発表したい。また、シロイヌナズナのNEKファミリーの解析についても論文を作成中である。ゼニゴケMpNEK1による微小管制御、先端成長制御の機構を詳細に解析すると共に、生殖成長における役割や標的因子・相互作用因子の解析を進める。ヒメツリガネゴケPpNEK1の破壊株、細胞内動態についても解析を進めており、細胞成長におけるNEKの機能を明らかにしたい。
|
Causes of Carryover |
現在作成中の論文が年度内に投稿に至らなかったため、論文投稿費・英文構成費を次年度に繰り越した。 また、実験の一部について進行が予定よりも遅れたため、消耗品などを次年度に繰り越した。
|
Research Products
(16 results)