2017 Fiscal Year Research-status Report
植物細胞の分裂と伸長を同時に調節する微小管制御系の解明
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16K07406
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
日渡 祐二 宮城大学, 食産業学群(部), 准教授 (10373193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 良勝 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任准教授 (30414014)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞伸長 / 先端成長 / 細胞分裂 / フラグモプラスト / キネシン / 微小管 / 光変換蛍光タンパク質 / ライブイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
微小管制御因子キネシンKINID1aは細胞分裂装置と細胞伸長装置に移動し、微小管制御に適切に作用する。本研究では微小管制御因子がどのように作用する場に移動するのかを明らかにするために、分裂装置や伸長装置へのKINID1aの移動メカニズムを解析している。今年度は(1)KINID1aタンパク質による分裂装置への移動メカニズム、(2)KINID1a mRNAまたはタンパク質による伸長装置への移動メカニズムを解析した。 (1)KINID1aタンパク質のモータードメインやCoiled coilドメインなどの領域を部分的に欠失させた変異型タンパク質に緑色蛍光タンパク質GFPを融合し細胞に発現させて、分裂装置への移動を観察した。その結果、Coiled coilドメインをもつ変異型タンパク質のみが分裂装置へ蓄積したことから、この領域がKINID1aタンパク質の分裂装置への移動に機能することがわかった。Coiled coilドメインはタンパク質多量体形成に関わるため、KINID1aが何らかのタンパク質と多量体になり分裂装置に移動することが示唆される。 (2)KINID1a-Dendra融合タンパク質を用いた光変換実験により、光変換したタンパク質は分裂装置のみに蓄積し、伸長装置には蓄積しない結果が得られた。これはmRNAが分裂装置近傍まで移動していることが示唆する。mRNA移動の関わるcis-elementが5'UTRに存在する可能性が示唆されたため、長さが異なる5'UTRをもつ変異型KINID1a-mcherry mRNAを発現する形質転換体を、それぞれ作製した。また微小管脱重合剤処理によりKINID1a-Dendra融合タンパク質が伸長装置にとどまらず近傍の微小管にも蓄積した。以上よりKINID1aタンパク質が伸長装置への移動には、mRNAレベルとタンパク質レベルの制御の2種類存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
タンパク質レベルでの移動制御については移動に関与する領域の同定は概ね予定通りに進んでいる。しかしながら、KINID1a-Dendra融合タンパク質の動態解析は定性的な解析はほぼ予定通りに実施したが、定量的な動態解析は画像解析法の構築が進まず、進捗が遅れている。 mRNAレベルでの移動制御は次の事案が発生したため、進捗が大幅に遅れている。 長さが異なる5'UTRをもつ変異型KINID1a-mcherry mRNAを発現させるコンストラクトの作製が遅れたため、安定形質転換体の作出が遅れた。また変異型mRNAを発現させると、発現量によって安定形質転換体の成長が阻害され、枯れてしまうことがあった。そのため、適切なmRNA発現量を示す形質転換体を選抜するのに時間がかかっている。現在ではいくつかの形質転換体が得られているので、直ちに観察に供する。 mRNAのライブメーニング法の確立では、RNAアプタマー法では基質が生細胞を透過しないことがわかり断念した。次に、mRNAの3'UTRにMS2 elementを挿入し、GFP融合MCPタンパク質でMS2 elementを可視化する方法を検討している。コンストラクト作製が複雑であるため、形質転換体作製に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
タンパク質レベルの制御系では、KINID1aと相互作用する因子の同定を行う。Coiled coilドメインに着目し、この領域に結合するタンパク質をアフィニティカラムによるin vitro精製系で精製してMS解析により同定する方法、および酵母2ハイブリッド系でタンパク質を網羅的にスクリーニングする方法を検討する。同定因子は、遺伝子破壊体を作出し、KINID1aタンパク質の移動に対する影響を調べる。また、KINID1a-Dendra融合タンパク質を使ったタンパク質移動の動態解析については、蛍光シグナルのトラッキングを自動化し、画像解析の効率化を進める。これは研究分担者との緊密な共同研究だけでなく、外部研究者から画像解析技術を導入する。これらにより、分裂装置および伸長装置へのKINID1a移動のタンパク質レベルの制御の分子機構を明らかにする。 mRNAレベルでの制御系では、まず長さが異なる5'UTRをもつ変異型KINID1a mRNAを発現させる安定形質転換体について、直ちにKINID1a-mcherry融合タンパク質の移動を調べる。変異型KINID1a-mcherryの移動に違いが検出される場合には、5'UTRの領域にmRNAを担うcis-elementが存在する可能性が高いことから、さらに5'UTRの領域を部分的に欠失させた変異型KINID1a-mcherry mRNAを発現させ、伸長装置への移動を調べ、cis-elementを同定する。 またKINID1a mRNAのライブイメージングでは、MS2 elementとMCP-GFP融合タンパク質を用いた方法を進める。コンストラクトを作製次第、形質転換体を作出し、mRNAのイメージングが可能か調べる。mRNAの特異的なシグナルが検出される場合には、mRNAの動態解析のために、MS2 elementとMCP-Dendra融合タンパク質を用いた方法も合わせて検討する。
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Causes of Carryover |
mRNAライブイメージングに用いる発現コンストラクトの作製が遅れているために、形質転換体の作出が実施できなかった。そのため、植物体の形質転換体作出に伴う物品費が予定額よりも低くなった。発現コンストラクトは次年度初頭には完成予定なので、該当助成金(次年度使用額)は計画どおり形質転換体の作出の物品費として使用する。
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