2016 Fiscal Year Research-status Report
葉断面からの再生をモデルとした種子植物の栄養繁殖の分子メカニズムの研究
Project/Area Number |
16K07408
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
木村 成介 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (40339122)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 栄養繁殖 / 植物 / 不定芽 / 再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の繁殖様式の中でも、葉、茎、根のような栄養器官から次の世代の植物個体が生じることで繁殖する方法を栄養繁殖という。北米原産の半水生のアブラナ科植物R. aquaticaは、自然界において、水の流れなどでちぎれた葉の断面から新しい個体を再生することで栄養繁殖をしている。本研究は、この葉の断面からの栄養繁殖(再生)のメカニズムを遺伝子レベルで明らかにすることを目的としている。 R. aquaticaの栄養繁殖は、葉片の先端部側の断面からは再生せず、基部側の断面からのみ再生するという特徴がある。そのため、先端部側と基部側を別々に解析、比較することで、再生に必要な遺伝子を絞り込むこととした。トランスクリプトーム解析のためのmRNA-seqは、R. aquaticaの葉を切ってから0、1、3、6、9、12、15、18、21時間後および1、2、3、4、6、8、10、12日後の、計17点について実施した。先端部側の断面と基部側と断面で発現が有意に異なる遺伝子群をGO enrichment解析を行った結果、葉を切ってから1~9時間後に、植物ホルモンの一種であるオーキシンの応答シグナルに差がみられた。また、9時間~1日後は細胞分裂に関与する遺伝子群、1~8日後は器官形成に関与する遺伝子群、そして、8~12日後では細胞分化に関与する遺伝子群に、発現の差がみられた。さらに、モデル植物のシロイヌナズナをin vitroで再生させる際にはたらくことが知られている遺伝子群の発現をR. aquaticaの葉片で調べたところ、シロイヌナズナの再生と同様の遺伝子ネットワークが、基部側の断面のみではたらいていることがわかった。また、オーキシンやオーキシン極性輸送阻害剤の添加実験から、オーキシン極性輸送が基部側からのみの再生に関わっていることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では2年目に完了する予定であったトランスクリプトーム解析について、初期的なデータ解析まで今年度に終わらすことができた。また、再生にオーキシンの極性輸送が重要であることもあきらかにすることができた。現在、シロイヌナズナとの比較を詳細におこなうため、当初計画になかったシロイヌナズナの葉断片を用いたトランスクリプトーム解析に着手している。計画が予定より早く進行している点に加え、当初計画には含まれていたかった先の内容の研究に着手できているという点で、当初計画よりも進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初予定にはなかったが、R. aquaticaのゲノム解読を別プロジェクトで完了することができたので、このゲノム配列情報を参照配列として利用することで、現在すでに終了しているRNA-seqのデータを用いて、より精度の高い遺伝子発現解析をおこなう。また、オーキシンの極性輸送が再生過程に重要であることが示唆されたので、植物ホルモンの定量を経時的に実施する。また、シロイヌナズナの葉の断片からは再生しないことを利用し、R.aquaticaと比較することで再生に必要な遺伝子ネットワークを明らかにしたい。そのため、シロイヌナズナの葉断片を用いた経時的なトランスクリプトーム解析を実施する。
|
Causes of Carryover |
研究の一部を海外の大学との共同研究で実施することになり、一部の解析費用が必要なくなったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度、プロジェクトの一部を担当するポスドクを雇用するための原資とする
|
Research Products
(13 results)