2017 Fiscal Year Research-status Report
葉断面からの再生をモデルとした種子植物の栄養繁殖の分子メカニズムの研究
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16K07408
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
木村 成介 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (40339122)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 栄養繁殖 / 植物 / 不定芽 / 再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の繁殖様式の中でも、葉、茎、根のような栄養器官から次の世代の植物個体が生じることで繁殖する方法を栄養繁殖という。北米原産の半水生のアブラナ科植物R. aquaticaは、自然界において、水の流れなどでちぎれた葉の断面から新しい個体を再生することで栄養繁殖をしている。本研究は、この葉の断面からの栄養繁殖(再生)のメカニズムを遺伝子レベルで明らかにすることを目的としている。 これまでの研究で、再生のメカニズムを分子レベルで明らかにするために経時的なトランスクリプトーム解析をすすめてきた。当該年度については、別プロジェクトにおいて、R. aquaticaのゲノム解読をおこなったので、ドラフトゲノム配列を参照配列とした網羅的解析を実施した。 R. aquaticaの栄養繁殖は、葉片の先端部側の断面からは再生せず、基部側の断面からのみ再生するという特徴がある。そこで、基部側と先端部側で比較トランスクリプトーム解析をおこなったところ、基部側でのみ再生に関わる遺伝子群の発現が誘導されていることがわかった。また、切断後初期の段階ではオーキシン応答性の遺伝子の発現が顕著に上昇していた。オーキシンの内生量を測定したところ、R. aquaticaでは、葉の切断後に基部側でIAA-Aspなどの蓄積がみられた。シロイヌナズナでは同様の蓄積は観察されなかった。これらの結果から、R. aquaticaでは、葉の切断後に極性輸送で基部側にオーキシンが輸送されて蓄積することが再生のトリガーになっていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
R. aquaticaのゲノム配列情報を整備することができたことから、より精密な発現解析ができるようになった。また、当初予定にはなかったオーキシンの定量解析をおこなうことで、オーキシンの極性輸送が再生に関与していることを明らかにすることができた。また、成熟葉の断面からは再生することがないシロイヌナズナとのトランスクリプトーム解析も行い、現在データの解析をすすめている。さらに、再生過程におけるDNAのメチル化の変動を解析するために、バイサルファイトシークエンスを実施している。 計画が予定より早く進行している点に加え、当初計画には含まれていなかった先の内容の研究に着手できているという点で、当初計画よりも進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに実施した大規模なトランスクリプトーム解析により栄養繁殖に関わる遺伝子ネットワークが明らかになりつつある。今後は、同定された遺伝子の機能解析をすすめる。葉片からの再生の過程については、現在、経時的な全ゲノムバイサルファイトシークエンス解析を勧めている。今後、得られた結果の解析をすすめ、分化した組織からの植物体再生のプロセスにおけるDNAメチル化の変動について知見を得たい。
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Causes of Carryover |
年度末に名古屋大学との共同研究打ち合わせを予定していたが延期となったため、旅費が必要なくなった。次年度に打ち合わせを延期するため、その分を繰り越した。
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Research Products
(12 results)