2016 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanism regulating abscisic acid signaling which supports plant survival under harsh conditions
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16K07412
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Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
藤田 泰成 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, 主任研究員 (00446395)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アブシジン酸 / 植物 / 脱リン酸化 / 遺伝子発現 / 浸透圧ストレス / シグナル伝達 / シロイヌナズナ / 乾燥ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では植物のアブシジン酸(ABA)シグナル伝達系の鍵因子であるグループA タンパク質脱リン酸化酵素2C型(PP2C)のうち、申請者らが命名し報告した、乾燥ストレス応答に特異的に関わる3個のPP2C遺伝子(HAI1、HAI2およびHAI3)を含む4個のサブグループAb PP2Cが強度高浸透圧の過酷環境下における植物の生存を支えるメカニズムを明らかにする。モデル植物シロイヌナズナの多重変異体を用いた本研究課題の解明を通して、実用的な不良環境耐性作物の作出へ向けた新たな研究基盤を確立する。 申請者らは、シロイヌナズナのABA受容体PYL1および5種類のPP2C(ABI1, HAB1, HAI1, HAI2およびHAI3)大腸菌発現タンパク質に加え、サブグループAaとAbのアミノ酸配列をキメラにもつキメラタンパク質を作製した。さまざまな濃度のABA存在下でPYL1とPP2Cタンパク質を反応系に加え、in vitroの脱リン酸化解析を行い、サブグループ間での脱リン酸化能のABA濃度依存性の比較を行った。また、MBP融合PYL1および各種GST融合PP2Cの発現タンパク質を作製した。さらに、これらのタグ付き大腸菌発現タンパク質を用いて、プルダウンアッセイを行い、サブグループ間でのPYL1-ABA-PP2C複合体形成におけるABA濃度依存性を明らかにした。これらの結果から、PP2Cの脱リン酸化能およびABA受容体複合体形成能におけるサブグループ間のABA濃度依存性の差が、過酷環境下でのPP2Cの機能において重要な役割を果たしていることが示唆された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、条件設定実験を十分に行い、当初計画通り17種類以上のシグナル因子の発現タンパク質の精製に成功した。また、予定していたin vitroの脱リン酸化解析とプルダウンアッセイを行い、サブグループ間での脱リン酸化能およびPYL1-ABA-PP2C複合体形成におけるABA濃度依存性を明らかにした。これらの成果は、当初予定していた計画通りであり、サブグループAaとAb間のABA濃度依存性についての仮説を証明し、過酷環境下でサブグループAb PP2Cが機能できるメカニズムの生化学的側面を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ABAシグナル伝達系におけるPP2CのサブグループAaとAb間のABA濃度依存性の差などに注目した生化学的研究を主に進めてきたが、次年度以降は、サブグループAaとAbの機能を欠損させた多重変異体を用いて、過酷環境下での生存に関する気孔閉鎖などの生理機能におけるサブグループAaとAb PP2Cの役割の違いを明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
実験計画は順調に進捗しているが、本年度は思った以上に実験に時間をとられたため、予定していた研究打合せのための出張を控えたことにより、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次世代シークエンサーを用いた網羅的な遺伝子解析など、より費用のかかる先端的な解析に用いることを計画している。
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