2017 Fiscal Year Research-status Report
ヒトデの生殖腺刺激ホルモン(リラキシン様ペプチド)の作用機構に関する研究
Project/Area Number |
16K07417
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
三田 雅敏 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50190674)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生殖腺刺激ホルモン / 比較内分泌 / リラキシン様ペプチド / G-タンパク質共役受容体 / 生殖生物学 / ヒトデ |
Outline of Annual Research Achievements |
無脊椎動物の生殖制御機構を分子レベルで解明することを目的として、本研究では、ヒトデの生殖腺刺激ホルモン (relaxin-like gonad-stimulating peptide, RGP)に注目し、(1) RGPの輸送経路、および (2) RGP受容体について解析をおこなった。 (1) RGPの輸送経路: イトマキヒトデRGP (PpeRGP)の分布および輸送経路を解明する目的で、PpeRGPのポリクローナル抗体(ウサギ)を作成した。得られた抗体はPpeRGPに対して高い特異性と力価を示した。また抗体とPpeRGPとの結合に競合させる目的でPpeRGPのビオチン誘導体を化学合成し、PpeRGPのELISA法による定量方法を開発した。原理は、PpeRGP抗体に結合したビオチン化PpeRGPをパーオキシダーゼを共役させたストレプトアビジンと結合させ、そこに基質としてTMBを加え、発色させる方法である。このELISA法によりPpeRGPはイトマキヒトデの主に放射神経と周口神経に存在していることが明らかになった。また、イトマキヒトデの放射神経をPpeRGP抗体による免疫染色を施したところ、管足側周辺部にポジティブなシグナルが得られた。 (2) RGP受容体: イトマキヒトデ卵濾胞細胞からリラキシンファミリーペプチド受容体(RXFP)と相同性の高いcDNAをクローニングした。Coding DNAシーケンスは2841bpから成り、947個のアミノ酸をコードしていた。翻訳後のタンパク質は分子量は104kDaと推定され、配列にはG-タンパク共役型受容体にみられる7箇所の膜貫通領域が存在し、さらにシグナルペプチドおよび5箇所のロイシンリッチリピート配列を持つことが確認できた。定量PCRの結果からPpeRXFPは主に卵濾胞細胞で発現していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) RGPの輸送経路:昨年度作成したイトマキヒトデの生殖腺刺激ホルモン(PpeRGP)の抗体を用いて、ELISA法によるPpeRGPの定量方法を開発した。これによりRIを用いずに高い精度でPpeRGPを定量することが可能になった。その結果、RGPは主に放射神経と周口神経に存在することが明らかになった。
(2) RGP受容体:昨年度リラキシン受容体ホモログとして得られたcDNAがPpeRGP受容体(PpeRXFP)である可能性を示す結果が得られた。さらに定量PCRの結果から、PpeRXFPは濾胞細胞に特異的に発現しているが、放射神経や周口神経では発現していないことが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) RGPの輸送経路:計画通り、イトマキヒトデの放射神経や周口神経をPpeRGP抗体による免疫染色を行いRGPの分布を解析する。また、イトマキヒトデと同じRGP分子を持つオニヒトデについても同様にRGPの分布について免疫組織学的に解析を行う。
(2) RGP受容体:PpeRXFPがRGP受容体であることを証明するために、PpeRXFP cDNAをベクターに組み込み、COS-7あるいはHEK293細胞で強制発現させ、PpeRGPとの結合実験や細胞内cAMP濃度の測定を行う。さらにRGPとRXFPとの相互作用に注目して、PpeRGPのオーソログであるAamRGPやAjaRGPとA鎖・B鎖を交換したキメラRGPを化学合成し、放卵誘起活性を調べることで、リガンドと受容体との結合サイトについて解析を行う。
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Research Products
(11 results)