2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K07422
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 卓 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20271710)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ / 表皮 / 転写因子 / 発生・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,垂層分裂による細胞増殖や葉緑体の分化抑制など,維管束植物の表皮細胞に特有の現象をもたらした分子的基盤を明らかにすることを目標として,シロイヌナズナの地上器官表皮細胞において,表皮分化のマスター因子として機能する転写因子PDF2の遺伝子発現が茎頂L1層に限定,維持される分子機構を明らかにする。具体的には,PDF2の遺伝子mRNAの消長,翻訳制御,タンパク質局在,他のタンパク質との相互作用について,詳細な解析をすすめる。さらに,ゲノム編集技術を利用して,ゼニゴケのPDF2相同遺伝子破壊株を作出し,その解剖学的解析から機能解明を目指すとともに,陸上植物の表皮細胞の分化機構の起源に関する手がかりを得る。 PDF2, ATML1を含むシロイヌナズナのHD-ZIP IVファミリー全16遺伝子のうち,10遺伝子の3’非翻訳領域には,保存された短い共通配列が認められる。各遺伝子の3’非翻訳領域をさらに詳しく調べたところ,いずれの保存配列にも逆向き相補配列が距離をおいて存在しており,ステムループ構造の2本鎖RNAを形成することが予想された。本研究者らは,これをHDG(ヘッジ)ボックスと名付けた。胚のL1層より内側でHDG ボックスが分解の標的になる可能性が考えられることから,発現への影響をみるために,GUSレポーター遺伝子にPDF2の3’非翻訳領域を融合した遺伝子を,構成的なCaMV35Sプロモーターの下流に連結したプラスミドを構築し,シロイヌナズナ植物への導入,形質転換株における発現パターンの解析を行ったた。しかし,GUS発現様式やmRNAの安定性に影響は認められなかった。 一方,ゼニゴケPDF2遺伝子のゲノム編集による遺伝子破壊を試み,致死性の表現型を示す系統を複数得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予想していたPDF2遺伝子mRNAの3'領域に特徴的なヘアピン構造の発現制御への関与について,確からしい結果が得られず,形質転換植物を追加して精査している状況にある。 ゼニゴケのゲノム編集による遺伝子破壊についても致死になるためか,破壊株が得られない状況から,弱い変異を複数単離する方針に切り替えて研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
ゼニゴケは弱い表現型を示す変異が得られつつあり,多数単離して精力的に表現型観察を進める。野生株と変異株のRNA配列解析についても,順次進める。 PDF2遺伝子発現を表皮に限定する仕組みの解析については,共同研究している東京大学において,スフィンゴ脂質によるPDF2タンパク局在制御の手がかりが得られつつあり,PDF2のSTART, SAD領域の機能解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
研究の遅延により,当年度最終月に予定していた試薬の補充を使用予定量以上に行う必要がなくなり,若干の誤差が生じてしまったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していた試薬の補充に用いて,研究推進を図る。
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Research Products
(1 results)