2016 Fiscal Year Research-status Report
オスのアメリカザリガニは対オス、対メスで異なる闘争戦略を取る
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16K07432
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
長山 俊樹 山形大学, 理学部, 教授 (80218031)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 闘争戦略 / 生殖戦略 / 雌雄 / ザリガニ |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、オスザリガニの対オス・対メスにおける闘争戦略の違いをビデオ・エソグラム解析し、行動学的に明らかにした。そこで一か月以上単独隔離飼育しておいたザリガニを用い、ほぼ同じ体サイズのオス同士、オスと抱卵前・抱卵中のメスという組み合わせで、30~45分間ペアリングし、その際の闘争の様子をビデオ撮影し、複数の行動要素に分類して秒単位で回数・時間を解析、エソグラムを作成して、一連の闘争パターンの流れを定量的に把握した。 1)オス同士のペアリングでは両者の間に複数回の激しいファイトが起こり、明白な優劣関係が成立した。闘争に勝利し優位となったオス個体は、低い姿勢のまま相手に接近するアプローチから、姿勢誇示ディスプレーを示しながら劣位ザリガニを追いかけまわすアタックにその接近行動が切り替わった。オスと抱卵前のメスのペアリングでは、メスザリガニはオスに対し、消極的な応答しか示さず、ほとんどの場合、1回前後の短いファイトだけが起こり、すぐに優劣が成立した。優劣成立後もオスはゆっくりとアプローチでメスに近づき、交尾の算段をし、実際約半数のペアで交尾行動が観察された。抱卵メスとペアリングしたオスはほとんど闘争しようとせず、メスからの一方的な攻撃のみが観察された。 2)ペアリング15分間、15~30分間のオスザリガニが示したアプローチ、アタックの回数を比較すると、オス同士のペアリングでは闘争勝利個体のアプローチ数が6.8から6.8回なのに対し、アタック数は0.1から12.9回と有意に増加したのに対し、抱卵前メスとのペアリングではアプローチが5.7から5.3、アタックが0.5から1.5と接近行動の切り替えが全く見られず、抱卵中メスとのペアリングではアプローチが1.7から2.9、アタックが0.9から0.2回とオスからはほとんど仕掛けないことが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、計画1)オスザリガニは対オス、対メスでどのような闘争戦略をとっているのか?、そして、計画3)メスの生理的状態の変化はオスの闘争戦略にどのような影響を及ぼすのか?解き明かそうと考えていた2つの研究目的について、当初の研究計画どおり、概ね順調に研究を遂行することができた。オスはオスに対してと全く異なる闘争戦略で、メスに接していることを定量的に明確に証明できた。またこの結果はメスもその生理的状態によって異なった闘争戦略をとっており、闘争戦略が生殖戦略と密接にリンクしていることを強く示唆し、次年度以降の詳細な研究ビジョンを組み立てることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目は特にオスザリガニの相手の性別識別能に関し、特に重点的に解析を進めていく方策である。予備実験から、被験者のオスに対して、拘束オス・メスを同時に呈示した場合、オスは決まってまずオスへ接近し闘争を行うこと、そして、闘争決着後メスへ定位することを確認しており、視覚・においといった化学感覚のどちらの信号が実際に性識別に使われているのか、視覚・化学感覚それぞれの感覚信号を遮断し、定位選択実験を行う。視覚・におい化学感覚共に伝わる通常状態、小穴を空けた遮光アクリル板で覆った小容器にそれぞれオス・メスを入れた視覚遮断状態、透明な密閉小容器にそれぞれオス・メスを入れた化学感覚遮断状態、両方の透明密閉小容器にオスを入れ、その脇からオス・メスそれぞれの尿を送水した視覚・化学感覚不一致状態、それぞれの条件下でオスザリガニがオス・メスどちらに定位するか定量的行動解析を進めることで、オスが相手の性別を識別している感覚信号を突き止める。また、メスを被験者に、同様の実験、並びに大きさの異なるオス、優劣それぞれのオスを呈示し、メスのオスザリガニ選好性及びその基盤となる感覚信号も併せて明らかにする。さらにオスの戦略が非抱卵・抱卵メスで異なっていたことから、オスはメスの生理状態をやはり知っていることが判明したので、その手掛かりとなる感覚信号も併せて解明する。
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Causes of Carryover |
画像データ解析用のコンピューター選定に、各社のスペック比較等予想外に時間がかかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記コンピューターの早急の購入に充てる予定。
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Research Products
(6 results)