2017 Fiscal Year Research-status Report
オスのアメリカザリガニは対オス、対メスで異なる闘争戦略を取る
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16K07432
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
長山 俊樹 山形大学, 理学部, 教授 (80218031)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経行動学 / 闘争 / ザリガニ / 感覚遮断 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は(1)オスが相手の性別を本当に識別可能なのか、(2)もしそうならば、相手のどのような情報を手掛かりに性別を知っているのか、主に行動解析した。 1)被験者のオスに、オス・メスを同時に呈示し、被験者のオスの振舞いをまず詳細に解析した。縦長の水槽の片隅両端にオスとメスそれぞれを拘束した状態で同時に呈示し、もう一方端から被験者のオスザリガニをリリースし、被験者の定位状況を解析した。その結果、被験者のオスザリガニの75%以上が最初にオスに向かって接近行動をしめすことがわかり、統計学的に有意な違いがあった。その後オスは対峙した相手オスを威嚇するような振舞いを示し、実際に闘争に発展するケースも観察され、自由に動ける被験者個体が勝利した。被験者はその後拘束されたメスの方へ接近し、相手に交尾を促した。また、抱卵メスと非抱卵メスを呈示し、被験者に二者を選択させたところ、75%位のオスは最初に非抱卵メスに定位した。このように、オスは相手の性別およびその生理的状態を識別していることが明らかになった。 2)そこで、オスは相手のどのような感覚情報を頼りに相手の性別を識別しているのか、感覚遮断実験を行って解析した。まず遮断前に一度オス・メスの二者選択実験を行った後、視覚情報遮断のため、左右両方の複眼を黒エナメルで塗り、不透明なキャップを取り付けオーバーナイトさせた。次の日、再びオス・メスの二者選択実験を行ったところ、視覚遮断前後でオス選択は共に75%以上と違いは見られなかった。一方、匂い化学情報検出の受容器が存在する小触角切断前後でのオスザリガニのオス選択率は75%から40%以下へと有意に低下し、さらにオス・メスの尿をしみ込ませたスポンジ呈示に対して、75%以上の確率でオス尿を選択したことから、尿中に含まれる化学物質が雌雄識別の信号となっていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、当初の研究目的(2)相手のどのような感覚信号を頼りに、オスは相手の性別や生理的状態を認知しているのか、行動生理学的に明らかにする、に関し、当初の研究計画どおり、概ね順調に研究を遂行することができ、オスは尿から放出される何らかの化学物質を頼りに、相手の性別を識別していることを明確に示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
オスが相手の性別識別に利用している性フェロモンのような化学物質の成分を知ることが最終年度の大きな研究目標となる。その目標達成には、精密な化学分析が必要であり、核磁気共鳴法を導入した尿中の成分分析を行う予定でいる。オス並びに抱卵前および抱卵中メスの尿をサンプリングし、その尿スペクトルの違いを比較し、性フェロモンの実体を明らかにする。またここまでは主にオス中心に研究を遂行してきたが、最終年度はメスの闘争戦略も併せて明らかにしていく予定である。メスは配偶相手としてどのようなオスを選択しているのか、より質の高い遺伝子獲得に向け、どのような闘争戦略をとっているのか解明する。
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Causes of Carryover |
オープンアクセス雑誌Biology Openの掲載料約20万円をキープしておいたが、査読者のコメントへの対応が思いの外手間取り、今年度中の支払いに間に合わず、次年度へと延びた。掲載決定後速やかに支払う予定。
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Research Products
(5 results)