2016 Fiscal Year Research-status Report
錐体と桿体の外節における脂質・タンパク質組成の違いが光応答に及ぼす影響の解析
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16K07438
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橘木 修志 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (70324746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
妹尾 圭司 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (50283908)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 動物生理化学 / 視細胞 / 錐体 / 桿体 / 光応答 / 脂質組成 / タンパク質組成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、錐体・桿体の光受容部(外節)のおける脂質組成・タンパク質組成の違いに着目し、これらの違いが錐体・桿体の応答にどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的としている。 錐体・桿体の脂質組成について、従来、ガスクロマトグラフィーおよび薄層クロマトグラフィーでの解析を行なってきた。本研究では、脂質組成の違いが及ぼす影響を検討するに先立って、さらに従来の方法よりも詳細な解析が可能なガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)を用いた再解析を行った。その結果、従来とはやや異なる結果が得られたため、現在、さらなる解析を行っている。研究計画では、【研究課題1:視細胞外節の脂肪酸組成が視物質によるGtの活性化反応効率に及ぼす影響の解析】を行う予定であったが、再解析の結果次第で検討すべき内容が変わるため、本年は測定系の確立のみを行なった。もう一つの脂質に関する計画【研究課題2:IRIMS法による錐体・桿体における視物質周辺の脂質環境の解析】については、当初の計画に基づき、測定系の確立に努めている。 タンパク質組成の違いが及ぼす影響を検討するために、本年度の計画【研究課題3:錐体・桿体が移設に特異的に発現している未知タンパク質の同定】を遂行した。当初の計画に基づき、錐体・桿体外節試料の採取を行った。また、本年度は、これまでの結果から、学術論文(Fukagawa et al(2017))を発表するに至った。また、この論文で同定された錐体外節には存在するが桿体外節には存在しないタンパク質(Neurocalsin-delta-B)について、遺伝子改変動物を作成し、現在その機能を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画では、平成28年度に、桿体・錐体の脂質組成の違いに着目した2つの研究(【研究課題1:視細胞外節の脂肪酸組成が視物質によるGtの活性化反応効率に及ぼす影響の解析】【研究課題2:IRIMS法による錐体・桿体における視物質周辺の脂質環境の解析】)を行う予定であった。研究課題1については、課題遂行の前に、脂質組成について詳細な再解析を行なったところ、計画策定の時点では明らかになっていなかった違いがみられたため、現在、実験条件の検討にとどまっている。今後、詳細な再解析データに立脚したデータを測定できるので、結果が期待できる。課題2については、計画どおりに測定系の確立を行なっている。 また、本研究の計画では、平成28年度に、錐体・桿体のタンパク質組成の違いに着目した【研究課題3:錐体・桿体が移設に特異的に発現している未知タンパク質の同定】を行う予定であった。本計画はほぼ予定通りに推移している。さらに、これまでに見つかった錐体外節特異的とみられるタンパク質について、平成29年度予定であった【研究課題4:錐体・桿体外節に特異的に発現しているタンパク質の機能解析】における遺伝子改変動物の作成の段階に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に終了出来なかった【研究課題1:視細胞外節の脂肪酸組成が視物質によるGtの活性化反応効率に及ぼす影響の解析】について、新たに得られるGC/MSによる脂質組成の解析結果に基づき、早急に検討を行う。これによって得られる結果は、平成29年度に終了予定の【研究課題2:IRIMS法による錐体・桿体における視物質周辺の脂質環境の解析】の結果と合わせて検討されるべきものであり、現在進行中の研究課題2の推移を見極めながら、両課題が同時に完了出来るよう務める。 また、平成29年度に継続して行う計画である【研究課題3:錐体・桿体が移設に特異的に発現している未知タンパク質の同定】は、今後も予定通りに遂行し、錐体・桿体外節に特異的に発現している未知タンパク質のさらなる同定につとめる。これまで、タンパク質の検討としては膜貫通タンパク質を主に対象としていたが、今後は、膜表在性タンパク質にも探索範囲を広げることにより、より多くのタンパク質が見つかることを期待している。みつかったものについては、速やかにノックアウト動物を用いた【研究課題4:錐体・桿体外節に特異的に発現しているタンパク質の機能解析】を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年の計画として、タンパク質のMS解析を複数回行う予定であったが、解析精度を上げるため、十分な量の解析用試料の採取を行うこととし、平成28年度中の実施を見送った。このため、その費用分が次年度使用額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の目的通り、生じた次年度使用額については、タンパク質のMS解析のために用いる予定である。
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Research Products
(4 results)