2017 Fiscal Year Research-status Report
ミツバチの偏光視による進行方向検出における時間補償の神経メカニズム
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16K07442
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
岡田 龍一 兵庫県立大学, 環境人間学部, 研究員 (20423006)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐倉 緑 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (60421989)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 空間認識 / ナビゲーション / 脳 / 偏光 / 昆虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、動物のナビゲーションのメカニズムは生物学や工学の分野から注目されている。長距離の採餌飛行をするミツバチはよいモデル生物になっており、今のところナビゲーション中の進行方向の検出に天空の偏光パターンを利用していることが有力である。しかし、日中の太陽の位置の変化にともなって天空の偏光パターンも変化するので正しい方向検出には何らかの時間補償が必要であるが、今はまだその脳メカニズムは不明である。本研究では、進行方向検出の中枢と考えられている中心複合体に着目し、進行方向検出における時間補償の脳メカニズムを明らかにし、その神経モデルを提出することを目的としている。 昨年度は、偏光のeベクトル認識に重要な働きをするとされている脳内の抑制性神経回路を明らかにする目的で、イオン型GABA受容体に対する抗体染色を施し、GABAシナプスのシナプス後細胞の局在を明らかにすることを試みた。今年度は、GABA受容体のもうひとつのタイプである代謝型GABA受容体に対する抗体染色を行った。ゲノム情報から特異的配列を抽出して作成した抗体で染色したところ、脳の広い範囲でシグナルが観察された。とくに、昆虫の高次中枢であるキノコ体のアルファ葉に縞状の特徴的なシグナルが検出された。キノコ体の内部構造を考慮すると、特定の感覚情報の情報処理にかかわっている可能性が考えられる。進行方向検出の中枢と目される中心複合体には強い陽性シグナルが検出されなかったことから、進行方向検出に代謝型GABA受容体は主要な働きをしていないかもしれない。 また、神経科学者や昆虫学者以外も対象とした雑誌に寄稿するなど、本研究に関する啓蒙活動においては一定の成果を得たと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究遂行の都合上、今年度予定していた電気生理学実験より抗体染色による神経回路の同定の方に重点を置いて進めた。それによって脳内のGABAによる抑制性神経回路について、当初とは異なり予想以上の知見が得られた。とくに、中心複合体内ではイオン型受容体が優性を占めるということがわかったので、来年度の電気生理学実験においては、よりターゲットを絞った実験を行うことが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
実験自体には問題らしい問題は見当たらないので、遂行に障害はないが、今年度、異動があったので実験装置の組み立てを急がなければならない。また、研究計画段階では予期していなかったが、GABA受容体のタイプ特異的局在から中心複合体が機能分離している可能性が見つかったので、機能分離を立証できるような追加実験をしながら、中心複合体の時間補償メカニズムのモデルをより詳細に記述できるように研究を進めていく。そのためにも、できるだけ、ルーチンワークには代表者が直接関わらないような環境を作る予定である。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では今年度は電気生理実験を主に行う予定だったが、研究遂行の都合上、神経回路の同定を目的とした抗体染色に重きを置いたので電気生理学実験に必要な高額な材料を購入しなかったために残額が生じた。電気生理学実験のための実験材料や試薬、器具を揃えなければならないので、前年度の残金がその資金として必要である。前年度の研究に使用した組織学的研究のための研究費は、今年度も引き続き行うGABA関連実験のための試薬などの消耗品費に必要である
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Research Products
(9 results)