2017 Fiscal Year Research-status Report
グアニン4重鎖(G4)とG4結合タンパク質Rif1による染色体制御機構の解明
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16K07456
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
深津 理乃 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (70600419)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | グアニン四重鎖 / Rif1 / 複製タイミング / 染色体高次構造 / 多量体化 / DNA結合 / キナーゼ阻害剤 / DNA複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
グアニン4重鎖(G4)構造は代表的な非B型DNA構造でありヒトゲノム上に35万カ所以上も存在すると推定されているが、実際それがゲノム上にどのように分布し、どのような生物学的な意義を有するかは未知であった。 最近代表者らは複製タイミングを制御する進化的に保存された因子Rif1は、遺伝子間に存在するG4構造を認識・結合し染色体ドメイン構造を制御することにより複製タイミングを規定することを見出した。そこで本研究では、Rif1とG4構造の相互作用を生化学的に詳細に解析するとともに、Rif1とG4相互作用が染色体高次構造を制御するメカニズムを解明する。 これまで、分裂酵母Rif1の種々の欠失誘導体を作製、精製しその活性を生化学的に解析しC端にG4結合ドメインおよび多量体形成ドメインがあることを見出した。また、N末端 HEAT repeat構造もG4結合能を有するが特異性および親和性が低い。今回、hsk1変異のバイパス能を指標に変異体を探索し、バイパスできなくなった点変異を同定した。そのなかでL848S変異は、ChIPアッセイにより染色体Rif1BSへの結合能が著しく減少していた。しかし、精製したL848Sタンパク質は、in vitroでG4に結合できた。このことから、Rif1の染色体への安定な結合には、G4結合能以外の機能が必要とされることが示された。また、Rif1結合部位が実際に細胞内で形成されているかどうかを確認するために、G4のループ部位に人為的に導入したI-SceI制限酵素部位を用いて、G4構造形成を検出する系を確立した。この系を用いて、G4構造形成配列では、ループは1本鎖になり、I-SceI切断が検出されなくなることから、細胞内でG4構造が形成されている可能性が強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分裂酵母Rif1の機能ドメインとその機能の概要を明らかにすることができた。また、複製タイミングの指標であるhsk1変異の相補能を喪失した点変異を同定することができた。ChIP解析により、それは染色体結合できるものできないものに分けられた。 これらの解析から、Rif1は、染色体結合(および脱リン酸化酵素結合)以外に、複製タイミング制御に必要な機能を有することを示す。また、L848Sは染色体結合できないが、in vitroではG4に結合する。したがって、安定な染色体結合にはG4結合能のみでは不十分であることも示唆された。また、今回、Rif1BSが実際に細胞内でG4構造を形成することを示す実験結果を得た。この方法を用い、細胞内でのG4形成に必要な因子を探索することが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果を基盤に、 (1) Rif1の細胞内でのクロマチン結合に必要なドメインを限定し、生化学的に解析する。 (2)C端のG4結合ドメイン、多量体ドメインの構造を、G4との複合体として決定する(九州大学神田大輔博士と共同)。 (3)G4と全長Rif1タンパク質との複合体の構造をCryo-電顕で観察し決定する(Michigan大学Huilin Li博士と共同)。 (4)細胞内のRi1BSのG4構造形成のために必要な因子を探索する。ヒストン修飾因子、トポイソメラーゼ、転写終結因子、RNaseH、などの変異体を用いてG4形成に及ぼす影響を調べる。また、転写阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、HDAC阻害剤、その他の阻害剤の影響を調べる。
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Causes of Carryover |
今回、Rif1のG4結合ドメインを増産、大量精製し、NMR解析、あるいはX線構造解析を行う予定でいたが、動物細胞発現系では大量精製がやや困難であった。そこで、平成30年度に大腸菌の発現系を用いて大量精製を試みる計画を立てた。繰越研究費は、そのためのconstruction(いろいろな組換え体を作製し、タンパク質溶解度のもっとも高いものを選択する必要がある)、タンパク精製、結晶化、濃縮などのために必要な試薬、キットなどの購入に使用する。 (1) in fusionシステムなどの組換え体作製のために必要な分子生物学的試薬 7万円 (2) 大量精製に必要なカラム、レジンなどの試薬 10万円 (3) 結晶化の条件を見出すためのタンパク質結晶化キット 30万円 (4) NMR解析のためにタンパク質を濃縮するカラム 5万円
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