2016 Fiscal Year Research-status Report
体細胞ヒストン修飾情報の系統解析によるヒトの細胞系譜および細胞分化過程の推定
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16K07458
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小柳 香奈子 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (20362840)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 系統解析 / 細胞分化 / エピジェネティクス / ヒストン修飾 / 細胞系譜 / 祖先復元 |
Outline of Annual Research Achievements |
分化した体細胞のエピゲノム情報の系統解析からin silicoで哺乳類の細胞系譜を構築し、さらに推定された細胞系譜の祖先節の形質状態、すなわち発生過程の細胞のエピジェネティック修飾の状態を推定することを研究目的とする。エピジェネティック修修飾の状態は、ゲノム上の各遺伝子の発現状態を反映していると考えられることから、本研究により個体発生過程の理解が進むことが期待される。これまでに、DNAメチル化情報の系統解析による細胞分化過程推定の可能性を示してきたが、本研究課題ではヒストン修飾情報について検討を行う。 平成28年度は、細胞系譜がよく研究されており、また全ゲノムのヒストン修飾情報が公開されているヒトの血球系細胞をモデルケースとして解析を行い、以下の成果を得た。 ・個体によってヒストン修飾位置が異なる変動サイトがみられた。 ・個体差のない一致サイトで系統解析を行ったところ、H3K27ac, H3K27me3, H3K36me3, H3K4me1, H3K4me3についてはおおむね既知の細胞系譜を反映する樹形が得られた。一方でH3K9me3については解像度の低い、既知の細胞系譜をあまりよく反映しない樹形が得られた。 ・系統樹上独立した系統で同様の変化(ヒストン修飾ON/OFF)がおきたホモプラシーサイトの有無を確認したところ、修飾範囲の狭い(短い)ものほどホモプラシーが多い傾向がみられた。H3K9me3はホモプラシーサイトの割合が多かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲノムワイドなヒストン修飾情報の系統解析による、ヒト血球系細胞の分化過程推定の可能性を示すことができた。また、ヒストン修飾の種類により推定結果が異なるという興味深い結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒストン修飾の種類により異なる結果が得られた原因について、詳細を検証する。また、ゲノム上のサイトによって個体差やホモプラシーの程度に違いがみられたので、細胞分化過程に重要なサイト・領域の同定が重要だと思われる。これらにより、より精度よく細胞分化過程を推定するための方策を探り、提案手法の改良に結びつける。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた物品購入を見合わせたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降に購入し、効果的に研究を進める。
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