2016 Fiscal Year Research-status Report
陸生動物の体内受精に関わる精子運動の適応的進化の分子基盤
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16K07459
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
渡邉 明彦 山形大学, 理学部, 教授 (30250913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 絵理子 山形大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20337405)
野口 立彦 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 進学課程, 助教 (30443005)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 体内受精 / 精子運動 / カルシウムチャネル / アデニル酸シクラーぜ / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は陸上環境に適応した両生類とショウジョウバエを用い、体内受精の進化に関わる精子運動調節の環境適応の分子基盤を解明する。今年度は、イモリ精子運動調節関連遺伝子の発現をサンショウウオ、及びツメガエル精子で検討するために、オスのサンショウウオを飼育した。精子形成期精巣からtotal RNAを抽出・精製し、mRNAベースのシングルエンドライブラリーを作成し、次世代シークエンサ-を用いてRNAseqを行なった。また、精子における発現の解析のために、非精子形成期の精巣からtotal RNAを抽出・精製し、RT-PCRサンプルを作成した。ツメガエルにおいては、全ゲノム情報が整備されたため、イモリの精子運動調節遺伝子の塩基配列を用いたblast検索により、ツメガエルにおける相同遺伝子の塩基配列を探索し、ツメガエルTRPV4チャネルの塩基配列を同定した。精子形成期及び非精子形成期の精巣から抽出・精製したtotal RNAを用いてRT-PCRによる発現解析を行ったところ、両者に同程度の発現が検出され、精子における発現の可能性が示された。そこで、TRPV4遺伝子ノックアウトツメガエルを作成し、精子運動における役割を解析することとし、種間で保存された領域を標的としたガイドRNAを作成した。一方、ショウジョウバエを用いて、イモリの精子運動調節関連遺伝子のオルソログとその関連遺伝子、52遺伝子に着目し、解析を進めた。RNAi系統を利用して生殖細胞内での遺伝子発現を抑制し、雄の妊性への影響を調べた。これまでに27遺伝子52RNAi系統について解析し、精子を産生しているにもかかわらず全く子を生じなかった2遺伝子(PKA, PKD2)、妊性が著しく低下した2遺伝子(Adenylate cyclase 35C, PKA catalytic subunit1)を得た。また、雌管状受精嚢の形態形成メカニズムと種間の多様性を生じるメカニズムを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンショウオの精子形成期については報告が無かったため、生殖期に捕獲した個体を飼育して検討する必要があり、当該期個体を得るために当初見込みより時間がかかった。そのためにRNAseqのデータ解析に若干の遅れが生じたが、計画の達成には問題がないと考えられる。一方、ツメガエルについては当初サンショオウと同様にRNAseqを実施する予定であったが、ツメガエルゲノム情報が整備されたため、これを利用して良好な結果が得られている。ゲノム編集は実施準備が完了しており、今後順次計画を進める。ショウジョウバエの精子運動調節遺伝子に関して、イモリの相同遺伝子との相同性が示唆されたことは、本研究の目的の達成のために良好な結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
サンショウウオRNAseqの解析データとツメガエル遺伝子情報を用いて、イモリ精子運動調節関連遺伝子の相同遺伝子をそれぞれ同定し、精子形成期及び非精子形成期の精巣における発現を比較解析することにより、精子に存在するかどうかを検討する。併せて精巣におけるin situハイブリダイゼーションを行う。さらに、精子運動における役割を解析するために、ツメガエルを用いてゲノム編集による遺伝子ノックアウトを行う。TRPV4、Cav3.2、及びAC3を主たる標的とする。一方、ショウジョウバエにおいては、RNAi系統を用いた姙性の解析を継続するとともに、低下が見られた系統の精子を蛍光標識して交尾後の挙動を観察し、姙性の低下と精子運動との関連性を検討する。併せてin vitroにおける精子運動解析のための実験系の構築を模索する。
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Causes of Carryover |
今年度中に完了する予定であったが試料調整に遅れが生じ、現在委託中のトウホクサンショウウ精巣のRNAseqデータ解析の経費分を次年度使用額として繰越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
RNAseqの委託解析費用として使用する。
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