2017 Fiscal Year Research-status Report
プリメタゾアモデルの拡充による動物多細胞性進化の機構解明
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16K07468
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
菅 裕 県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (30734107)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 進化 / 多細胞 / 細胞間連絡 / 細胞接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.ゲノム編集法確立 今のところゲノム編集実験においてポジティブな結果は得られていない。現在、その原因を突き止める実験を行っている。TALEN法がうまく動かない場合、大きく分けて2つの問題点が考えられる。まず①TALENタンパク質が標的部位を認識していない、もしくは認識しても切断していないこと、もう一つは②切断は起きていても、その修復の際にホモロガスリコンビネーションや不完全な修復(これによって遺伝子の機能が失われる)が起きていないことである。まずは②の要因について、新たなアプローチを行った。すなわち、TALENとは異なる、実績のある別のゲノム編集法(ZFN)を適用することで、ホモロガスリコンビネーションが起こると蛍光を発する仕組みを細胞に導入し、こうしたDNA修復の仕組みが単細胞ホロゾアに備わっていることを確認しようとしている。 2.単細胞ホロゾアが持つ「多細胞的な」遺伝子の機能解析 予定通り、単細胞ホロゾアの一種であるクレオリマックスが持つSrc遺伝子の制御の仕組みの一端を解明し、論文に発表することができた。また、カプサスポラが持つ細胞外マトリクス様遺伝子の機能解析については、主な遺伝子について過剰発現実験が終了し、現在は抗体作成実験に移っている。更にカプサスポラのNotch様遺伝子に関しては、truncated(短縮形)タンパク質発現実験を精力的に行った結果、その分子機能について非常に興味深い結果が得られ始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最大の目標であったゲノム編集法の確立にはまだ成功していないが、このような壁は、科学研究にはつきものであり、織り込み済みである。一方で、問題点を一つ一つ洗い出すための実験を新たに始めることができており、ゲノム編集法の確立へ向け確実に前進している。また、こうした試行錯誤からまた新しい知見が得られる可能性もある。 一方、既存の技術(遺伝子過剰発現法)を利用した、単細胞ホロゾアの「多細胞的」遺伝子群の機能解析については、予定通り進めることができた。特に、クレオリマックスで今回発表することのできたSrc遺伝子の機能解析は、単細胞ホロゾアの遺伝子を直接その細胞で解析した世界初の例となった。カプサスポラにおける細胞外マトリクス様遺伝子の過剰発現実験に関しては、どの遺伝子の過剰発現についても全く表現型を変えることがない、という意外な結果が得られている。このことは、こうした細胞外マトリクス様遺伝子が、好適環境にあるアメーバステージでは全く何の機能も発揮しないことを示唆している。現在、そのことこそが実は多細胞性進化の謎を解く鍵の本質なのではないかという予想をもとに様々な仮説を立てて、それを証明するための抗体実験に移行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノム編集の成功に向け、遺伝子導入効率の向上が不可欠である。これを実現するため、昨年度所属研究機関で新型遺伝子導入装置を導入した。この機器は条件設定の自由度が非常に高く、様々な条件を検討できる反面、適した導入条件の発見には多くの労力が必要とされる。しかし、既にこの機器でも遺伝子を導入することには成功しており、今後条件の調整を行っていく。また、単細胞ホロゾアの「多細胞的」遺伝子群の機能解析については、タンパク質レベルの実験、特にカスタム抗体を使用した解析にシフトするとともに、非常事態に置かれた細胞や、様々な発生段階における細胞での機能解析実験を進める。この実験は、従来の計画にはないものの、細胞外マトリクス様遺伝子の解析で得られた、環境特異的な遺伝子機能の発揮、というアイデアをもとにした新しい展開である。特に貧栄養状態でどのような遺伝子の働き方の違いが現れるか、という点については、実験系が単純なことから、明白な結果が出やすい可能性がある。こうしたデータを、多細胞性進化メカニズムを考察していくうえでの有力な材料としていく。
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Causes of Carryover |
予定通り進まなかった実験に関して、その原因を探る作業を優先して行ったため、予定通りに進んだ場合に計画していた試薬や機器の購入が、次年度以降に先延ばしされたため。
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[Journal Article] Extreme genome diversity in the hyper-prevalent parasitic eukaryote Blastocystis2017
Author(s)
Gentekaki, E., Curtis, B. A., Stairs, C., Klimes, V., Elias, M., Salas, D., Herman, E. K., Eme, L., Arias, M. C., Henrissat, B., Hilliou, F., Klute, M. J., Suga et al.
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Journal Title
PLoS Biology
Volume: 15
Pages: e2003769
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Dynamics of genomic innovation in the unicellular ancestry of animals2017
Author(s)
Grau-Bove, X., Torruella, G., Donachie, S., Suga, H., Leonard, G., Richards, T. A., Ruiz-Trillo, I
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Journal Title
eLife
Volume: 6
Pages: e26036
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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