Outline of Annual Research Achievements |
福島県の双葉層群(後期白亜紀:8900万年前)やモンゴルのゴビ砂漠の地層(前期白亜紀:約1億年前)から,3次元的構造が良好に保存されている被子植物初期進化群の花化石や果実化石を発見し,古植物学研究の新たな領域を切り開いてきた。 被子植物の「花化石」は,白亜紀に急激に炭化し, 火山や褶曲などの高温や高圧の影響も受けていないと言う特殊な堆積条件の特殊な地層に保存されている。このような特殊な地層は, 国際的にも多くはない。そんな中で,被子植物の起源の地と考えられている東南アジアの熱帯地域の白亜紀地層に焦点をあてて,「小型化石」の可能性を探った 熱帯地域は高温高湿のため, 植物堆積物の分解が早く, 小型化石の研究に必要な堆積層が少ないと考えられてきた。しかし, タイやマレーシアなどの東南アジアでの予備的研究によって, 被子植物の小型化石の研究に適合している白亜紀の堆積層が存在することを確認し,アジアの熱帯地域で, 白亜紀の被子植物の初期進化群の探索を進めている。9月末から10月にかけて,マレー大学の地質学グループと共同で,マレー半島のPahang州およびJohore州で,野外調査を実施し,得られたサンプルをBulk sieving法にて処理を進めている。 双葉層群の北に位置する久慈層群は,棚井氏らによって植物の印象化石が発見されていることで注目されている。また,最近では,早稲田大学の研究グループが,多くの脊椎動物の化石が発見している。これまでに,早稲田大学の研究グループと共同で,久慈層群の夏井川上流の玉川層と沢山層の地質を調査し,これらの中に多くの炭化物を含む層序があることを確認している。現在,サンプリングした堆積岩からミクロな選別フルイによる, 炭化小片を取り出し,さらに,実体顕微鏡下で被子植物の保存性の良い小型化石を探索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに双葉層群やモンゴルのテブシンゴビの採取してきた炭化化石のSortingにかなりの時間がかかっているが,おおむね,順調に推移している。これらの成果は,随時,アメリカのPeter Craneらとの共同研究としてPNAS誌などに論文発表を重ねている。28年度の発表論文は,6編となっている。 シカゴの大型シンクロトロン(APS)が,高機能性を上昇させており,高精度でのマイクロCT撮影ができるようになってきたことも要因の一つである。そんな中で,双葉層群から,新たな2種類の小型化石(花化石)の論文をまとめつつある。これらの化石の一つは,花化石の特徴から,ヤマグルマ科の新属であることを明らかにした。近く,JPRに論文として発表されることになっている。 マレーシアなどの東南アジアの熱帯地方の白亜紀の地層から小型化石を発見するということは,まだ,誰にも成し遂げられていない研究である。28年度に,マレー半島の南側全域でジュラ紀~白亜紀の地層を丁寧に調査した。ほとんどのLocalityでは,堅いレッドベッドの堆積岩であり,小型化石の研究には適さないものであった。その中で,わずかではあるが非固性の泥質な堆積岩が入っていることがわかったので,サンプリングを行ってきた。炭質性物質も含まれていることから,現在,Bulk sieving法で処理して,炭質物質の状態を確認しているところである。被子植物の起源の地とされる熱帯地方の白亜紀の地層から,花化石を探すことは,容易なことではなさそうである。 脊椎動物の発掘をしている早稲田大の研究グループから,久慈層群の層序に炭化した植物化石が含まれているという情報がよせられ,共同で地質調査をしたところ,保存性の炭化化石が含まれている可能性が大きいことが認められた。一部,大量サンプリングを始め,29年度には,本格的なサンプリングを行うことにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,モンゴルから発見している小型化石について,分類学的位置や従来の古植物学的研究と比較しながら,引き続き,解析を進めていく。 「花化石」は,いくつかの堆積条件が積み上げられた特殊な地層でないと保存されることはなく,国際的にも炭化した「花化石」を単離できるのは,わずかの地点に限られている。申請者は,炭化した小型「花化石」を含んでいる新たな白亜紀の地層を探すことにする。久慈層群の異なる層順から,被子植物の「花粉」「果実」「種子」「花」「材」等の保存性の良い植物化石を豊富に含んでいる。このような地層は,白亜紀に氾濫原であった地域で,炭化した「花」「果実」「種子」がシルト層の中に保存され,その後,高温や高圧の影響を受けていないと言う特殊な堆積環境が維持されてきた地層である。 29年度には,研究を発展させるのに,非常に有望な久慈層群の夏井川上流での本格的な発掘・サンプリングを進めることにしている。堆積岩のサンプル量は,1トンにすることが目標です。これらの堆積岩を2~3ケ月の間,自然乾燥した後に,Bulk sieving法による洗浄・抽出作業を行っていきます。おそらく,Bulk sieving法に,3~4か月を必要とする。得られた炭化物の実体顕微鏡下でのsortingを進めていく。サンプルの状態にもよるが,Sortingに半年の年月は必要です。 小型炭化植物化石の中から,花化石および果実化石や種子化石などの植物化石を実体顕微鏡を用いて選別し,花化石,果実化石,種子化石と,材や胞子嚢群などのそれぞれの種類別に類型化する。得られた花化石や果実化石を走査型電子顕微鏡による観察で微細形質を明らかにし,現生植物との比較していく。その中から,大型シンクロトロンによるマイクロCTに適している花化石などを選別していく。
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