2016 Fiscal Year Research-status Report
日本列島及び日本海成立過程が海浜性昆虫の分布形成に与えたインパクト
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16K07484
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
小林 憲生 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (00400036)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大原 昌宏 北海道大学, 総合博物館, 教授 (50221833)
小島 弘昭 東京農業大学, 農学部, 教授 (80332849)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海浜性昆虫 / 日本列島形成 / 系統地理 / 遺伝的分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
「日本に棲息する生物は、いつ、どのようなルートを辿って日本に定着したのか?」と言う日本産の動植物の起源について、いくつもの研究がなされてきた。この中で、海浜環境に適応した昆虫の場合、内陸にも海中にも進出出来ないことから、線上の一次元(線)の分布パターンを呈する。その結果、その他の陸上生物と異なり、①日本列島太平洋側、②日本列島日本海側、③大陸側という概ね3つの地理的に離れた地域の比較が必要とされる。 イワハマムシ、ハマベゾウムシ、スナムグリヒョウタンゾウムシ/トビイロヒョウタンゾウムシは、海浜環境にのみ生息し、飛翔力を欠く移動力の低い種であり、地域個体群間で顕著な遺伝的分化が生じている種である。また、これまでのDNAの比較研究から、上記①及び②の地域の地域個体群は、いずれも約350万年前に分化したと推定される。そして、当時の日本列島形成の状況から、日本海側の②の個体群は、①の太平洋側個体群よりも、当時、地理的に連続していた③の大陸の個体群と遺伝的に近縁である可能性が有る。この仮説を検証するため、幾つかの海浜性昆虫を採集・調査し、DNA並びに形態比較を行うことを目的とした。 初年度は、韓国日本海側及び太平洋側の島嶼部(伊豆・小笠原諸島,薩南諸島)の調査を実施し、解析用の海浜性甲虫(トビイロヒョウタンゾウムシ、コケシガムシ、ハマベゾウムシ、ハマヒョウタンゴミムシダマシ、ホネヒョウタンゴミムシダマシ)のサンプリングを行った。現在は、採集した個体に対して、DNA抽出、PCRでの遺伝子増幅、塩基配列の決定を順次行っている。このうち、上記の海浜性ゾウムシ類2種の個体群構造に関する比較では、朝鮮半島西南部の個体群は、九州・薩南地方の個体群と遺伝的に近縁であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
9-10月に韓国(束草-釜山-巨済島に至る)計16地点で採集を行った。その結果、ハマベゾウムシ、スナムグリヒョウタンゾウムシ、ハマヒョウタンゴミムシダマシ、ホネヒョウタンゴミムシダマシと、比較対象として高い飛翔力を有するコケシガムシを採集した。現在は、採集した個体に対して、DNA抽出、PCRでの遺伝子増幅、塩基配列の決定を順次行っている段階である。 論文の執筆状況としては、太平洋側と日本海側に生息する海浜性ゾウムシ類(スナムグリヒョウタンゾウムシ/トビイロヒョウタンゾウムシ)2種の個体群構造に関する投稿原稿が完成したところである。上記の事から、研究計画は概ね順調と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に当初の予定通り進める。 調査:次年度は、日本海側(石川県・新潟県周辺)のハマベゾウムシ、ホネヒョウタンゴミムシダマシ、およびコシガムシの採集を中心に行う。次いで、イワハマムシの追加採集を行う。昨年、これまで空白地帯とされた地点で、本種の新産地が発見された。この地点は、北海道の①日本列島太平洋側と②日本列島日本海側の中間地点に位置することから、本研究課題を遂行・総合的な考察を行う上で重要な地点と言える。よって、北海道の函館地方の追加採集を計画している。次いで、進捗状況によっては、ハマヒョウタンゴミムシダマシ、ホネヒョウタンゴミムシダマシを採集するため、東北地方の追加調査も検討する。 実験:上記で採集した個体の塩基配列の決定・比較を行う。 論文:スナムグリヒョウタンゾウムシ/トビイロヒョウタンゾウムシに関する論文の投稿を行う。加えて、産地が局所的で希少種としてレッドデータにも掲載されているハマベゾウムシについては、これまでの分布記録を取りまとめて、論文化を行う。
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Causes of Carryover |
実施した調査・採集では想定以上の収穫が有ったため計画自体は順調と言えるが、申請代表者の負傷に伴い、予定していた調査・採集の一部を行うことが出来なかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実施できなかった調査は、次年度行う予定である。
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[Presentation] 薩摩黒島が面白い!2016
Author(s)
嶋本習介・金子直樹・小島弘昭・石川忠
Organizer
日本昆虫学会関東支部第53回大会
Place of Presentation
玉川大学
Year and Date
2016-12-04 – 2016-12-04
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