2016 Fiscal Year Research-status Report
昆虫の交尾器進化:ミナミカワトンボ科の毛細管現象を用いた精子掻き出し機能
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16K07486
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
林 文男 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (40212154)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 交尾器 / アロメトリー / 形質置換 / 精子置換 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国大陸中部から東南アジアにかけて分布するミナミカワトンボ科のオスの交尾器形態などの繁殖形質を測定し,さらにそうした繁殖形質と交尾行動がどのように関係するかを明らかにするために,今年度は,5月15日~24日に中国南部において,7月8日~16日に中国南東部において,3月18日~22日に台湾において野外調査を行った.そこで得られたミナミカワトンボ科のオス成虫の交尾器について,その微細構造を観察し,大きさを測定した.メス成虫については,精子を貯蔵する器官の形態と,そこに含まれている精子数を求めた.さらに,オス成虫については,翅に斑紋を有する種と斑紋のない種がいるが,頭幅,前翅の長さ,後翅の長さ,斑紋の長さ,交尾器の長さに関するアロメトリー解析を行い,これまでに得られたすべてのデータと合わせてみると,Euphaea属の種の組み合わせによって,同種といえども斑紋サイズに形質置換が生じている可能性が示唆された.つまり,同所的に斑紋を有する他種がいると,他種がいない集団に比べて斑紋がより発達する傾向が認められた.そこには,斑紋にかかる性選択(オスどうしの争いでより有利という傾向,あるいはメスの配偶者選択など)と,種間交雑を避ける(斑紋で種の認知を行うため)ための形質置換が同時に作用している可能性があると考えられた.一方,オスの交尾器はライバルオスの精子の掻き出し(精子置換)の機能を有するが,その大きさには体サイズと相関がないか,あるいは負のアロメトリー関係があり,交尾器の大きさは平均的なメスの精子貯蔵器官の大きさに収束する傾向があることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国南部,南東部,台湾で野外調査を行うことができ,多くの標本とデータを追加することができた.これまでのデータと合わせることにより,インドシナ半島東部におけるミナミカワトンボ科の各種の分布状況と形態的変異が予想以上に明らかになった.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,中国(台湾を含む)において野外調査を行ったにもかかわらず,配偶行動を野外で観察することができなかった.これについては今後さらに繁殖期の最盛期に調査を行う,あるいは高密度に生息する調査地を選定するなど,さらに精力的に取り組む必要がある.
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Research Products
(2 results)