2018 Fiscal Year Research-status Report
フォッサマグナ地域における交雑帯がミツバツツジ類の種分化に及ぼす意義
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16K07493
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
菊地 賢 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353658)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | EST-SSR / ミツバツツジ / 交雑帯 / 分断化選択 / hybrid swarm |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本で多様な種分化を遂げたミツバツツジ節の樹木を対象に交雑帯における遺伝的組成を調べ、植物の交雑帯が持つ進化史的意義や、植物の種分化に寄与する遺伝的要因を明らかにすることを目的としている。 本年度は、富士・箱根地域にあるミツバツツジ・キヨスミミツバツツジ・トウゴクミツバツツジの3種交雑集団および関東地方および伊豆半島の純系集団を対象に、試料採取を行い、EST-SSRを用いた遺伝子多型の解析を行うとともに、雑種集団においては開花期に花の採取をおこない、花形態の解析をおこなった。 その結果、純系集団に関しては、遺伝的組成に種間で明瞭な相違が見られた一方、交雑帯においては3種の遺伝的組成が混交した遺伝的組成が認められた。ただし、開花フェノロジーの重複が最も少ないミツバツツジ・トウゴクミツバツツジのF1雑種と推定される遺伝的組成を示す個体は見られなかった。そのため、交雑帯では繰り返し生じる種間交雑によって3種が混合した独自の遺伝的組成が形成されていることが示唆された。 しかし花形態に着目した場合、中間的形質を示す個体は遺伝的にも雑種の遺伝的組成を示す一方で、雑種の遺伝子型でありながら純系種の形質を示す個体が多いことが示された。この傾向はキヨスミミツバ・ミツバツツジ雑種系において顕著であり、雑種やミツバツツジの遺伝子型を示す個体の多くがキヨスミミツバツツジの形態的特徴を有した。以上から、ミツバツツジ雑種集団においては、純系種の形質が選択される分断化選択が機能している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、SSRマーカーを用いた雑種・純系集団の遺伝子多型解析結果に基づいて、雑種集団を構成する個体からRADシーケンスによってゲノム情報を入手する計画であった。しかし、当初用いたSSRマーカーの多型性および汎用性に問題があったため、本年度は急遽予定を変更し、近縁種で開発されたEST-SSRマーカーによる再解析をおこなった。そのため、当初予定していたRADシーケンスは完了していない。
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Strategy for Future Research Activity |
ミツバツツジ雑種集団において、未完遂であったRADシーケンスによるゲノム情報の取得をおこなうとともに、花・葉形態との比較をおこない、交雑帯で分断化選択が生じている可能性を検証するとともに、分断化選択に寄与している遺伝子の特定をおこなう。
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Causes of Carryover |
本年度においては、当初予定していたRADシーケンスによるゲノム情報の取得ができなかったため、そのために必要であった予算として次年度使用額が生じた。翌年度において速やかに、ゲノム情報の取得を行う予定である。
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