2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K07497
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 寛 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (00259996)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 系統 / 軟体動物 / 個体発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は軟体動物尾腔類の個体発生を観察することにより、軟体動物の系統関係や、形態進化、さらには軟体動物と他の冠輪動物との系統関係について推定することを目的としている。本年度は、研究対象であるミドリマルアシウミヒモの産卵時期に2度のサンプリングを行い、合計11個体の大型抱卵個体を得た。このうち1個体がおよそ80個の卵を放出した。これに雄個体から取り出した精子をふりかけて受精させ、発生の過程を受精後17日目まで観察することができた。胚は成体の棲息地海底の水温とほぼ同じ温度に設定した保温庫で飼育した。その過程における形態変化は以下の通りである。受精後約10時間で嚢胚期、約14時間で孵化、約20時間でトロコフォア(担輪子)幼生となる。その後幼生の体は伸長し、受精後5日目に繊毛環を失い変態する。その後は外部形態に顕著な変化は認められず、受精後17日目においても、成体では体表を覆う石灰質の鱗片や小棘は出現せず、またその前段階である顆粒状の突起も出現しなかった。各段階で固定した幼生の標本は走査型電子顕微鏡で外部形態の詳細を観察するとともに、免疫染色法により神経系と筋肉を観察した。本種の発生は、同じ尾腔綱の別科に属するケハダウミヒモ属の発生に類似するが、後者では繊毛環を失う前に出現する石灰質鱗片の出現が遅いことで異なっていた。また、軟体動物中、本綱とともに保守的な一群とされる溝腹綱(カセミミズ類)の幼生は、外壁(test)を形成することで尾腔綱の幼生とは異なっているが、両者の幼生神経系の形態は互いによく似ることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
尾腔類の個体発生過程については、その胚の得難さから知見が乏しく、ケハダウミヒモ属の1種についての初期発生を記録した1論文が公表されているにすぎない。本研究では比較的多くの胚が得られ、受精から変態まで、17日間にわたる観察を実施し、新知見が得られたことは予想以上の成果である。一方、ケハダウミヒモ属の初期発生では変態前に体表に出現することが報告されている石灰質の鱗片が、本種においては変態後2週間以上出現しなかったことは予期せぬ結果であった。内部形態観察のための準超薄切片の作成は現在準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では十分な数の胚を得ることが極めて重要である。平成28年度の研究ではおよそ80個の胚が得られたが、その胚は飼育中に減数し、固定等処理の失敗によってもかなりの数が失われた。今後、十分な観察を行うためにはさらに多くの胚が必要である。平成29年度は、成体のサンプリングを、タイミングをわずかにずらして複数回行うことや、より状態の良い成体を得られるような採集・運搬方法等の考案、薬品による産卵誘発処理方法の最適化などによって、より多くの個体が放卵するような条件の探索に努める。また石灰質の鱗片が出現しない点については、本来の性質によるものか、飼育環境と棲息環境との違いに起因するものかが不明である。水温や水質の設定変更等環境を変えることと、さらに長期間の飼育を行うことで、鱗片の出現から成体に近い形態に達するまでの形態変化の観察をめざす。
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