2018 Fiscal Year Annual Research Report
An assessment of mollluscan phylogeny based on the development of Caudofoveata
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16K07497
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 寛 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (00259996)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 系統 / 軟体動物 / 発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は軟体動物尾腔類の個体発生を観察することにより、軟体動物の系統関係や、形態進化、さらには軟体動物とその他の冠輪動物の系統関係について推定することを目的としている。本年度は、研究対象であるミドリマルアシウミヒモの産卵時期に3度のサンプリングを行った。1度目に得られた動物は放卵したが、卵は受精せず、すべて崩壊した。2度目に得られた動物が放卵した卵は受精し、中期トロコフォアまでの観察を行った。しかし異常発生が多く、また幼生数の減耗を押さえるために考案した容器でも減耗を押さえられず、目標とする、成体となるまでの発生過程の観察はできなかった。3度目のサンプリングは過去に実施できなかった10月初旬に行い、雌雄合計66個体を採集したが、ほとんどの個体は放卵・放精後、あるいは未成熟のもので、卵、精子をもつ個体はそれぞれ2個体と3個体であった。すなわちこのころまでに、あるいは同様の環境条件になった時点で放卵・放精が終わっており、過去の調査結果と考え合わせると、産卵が短期間に行われることが推測された。ミドリマルアシウミヒモについてはこのような状況で、計画していた変態から成体までの発生過程を観察することができなかったが、2度目のサンプリングで得られた、同じ尾腔類で別科、ケハダウミヒモ科のリョクヨウクワガタウミヒモの発生を変態前後まで観察することができた。この種は受精後7-8日で変態し、変態直前から前後の繊毛環のあいだに規則的に並ぶ顆粒状の突起、あるいは、その顆粒の位置に出現する石灰質の鱗片と思われるものが観察された。これはNielsenらによるケハダウミヒモ科の1種の発生観察や、Okusuによる溝腹類カセミミズの発生観察で認められた特徴と一致する。これらのことから、ミドリマルアシウミヒモの鱗片が幼生変態後10日以上経っても出現しないことは本種本来の特徴である可能性が高まった。
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