2017 Fiscal Year Research-status Report
シロアリにおける性特異的な兵隊分化の至近機構の解明
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16K07511
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
前川 清人 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (20345557)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会性昆虫 / シロアリ / カースト分化 / 幼若ホルモン / 脱皮ホルモン / 兵隊 / RNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
防衛のための高度に特殊化した兵隊の存在は,社会性昆虫のシロアリが持つ大きな特徴である。系統的に祖先的なグループでは,兵隊の性が一方に偏ることはない。しかし派生的なグループでは,兵隊の分化経路に明瞭な性差がみられる種が多く存在する。兵隊分化は,職蟻の幼若ホルモン(JH)量の上昇に応じて起こるため,兵隊の分化経路に明瞭な性差が見られる種では,性情報とJHシグナルに密接な関係性があると考えらえる。そこで本研究は,兵隊の性に明瞭な違いがみられ,系統的に重要なシロアリ種を用いて,性情報とJHシグナルとの関係性を調べ,如何なる共通性と多様性があるのかを明らかにする。本年度は,ヤマトシロアリや近縁群のゲノムおよびトランスクリプトームデータを利用して,性決定遺伝子カスケードの探索を行った。先行研究 (Price et al., 2015) で示されている通り,シロアリ類では,カスケードの最下流にある保存性の高い転写因子を見いだすことが出来なかった。ただし,一部の保存ドメインを含む候補の遺伝子が複数得られたので,発現と機能解析を個別に進めている。更に本年度は,ヤマトシロアリよりも祖先的なグループであるネバダオオシロアリにおいて,JH処理による兵隊分化の人為的な誘導系を利用して,ホルモンのシグナル伝達経路の各遺伝子の発現・機能解析を遂行した。基礎生物学研究所の次世代DNAシーケンサーを利用して網羅的な解析 (RNA-seq) を行い,兵隊分化の鍵となる重要な遺伝子を発見した。以上の結果の一部は,原著論文にまとめると同時に,第88回日本動物学会,第19回日本進化学会,第62回日本応用動物昆虫学会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
性決定遺伝子の特定には至っていないが,候補遺伝子は絞られている。また,兵隊分化に関与する重要な鍵遺伝子を発見したため。
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Strategy for Future Research Activity |
保存ドメインを一部もつことが確認できた性決定因子の候補遺伝子に注目し,発現と機能解析を優先して遂行する。RNA-seqにより発見された兵隊分化に関与する鍵遺伝子と,性決定遺伝子経路との関係も詳しく調べる。各種で得られた成果を統合し,共通性と多様性を整理する。
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