2023 Fiscal Year Annual Research Report
Chemical Strategies of Myrmecophilous Insects Can Vary According to the Intensity of Interactions with Ants.
Project/Area Number |
16K07516
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
乾 陽子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (10343261)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 化学偽装 / 好蟻性 / シジミチョウ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究でこれまでに、熱帯性の絶対共生アリ植物を専食するムラサキシジミ属のなかに、アリを欺く化学戦略に多様なバリエーションが見られることを明らかにしてきた。育児およびコロナ禍のため海外渡航が制限されてからは、好蟻性昆虫で従来から知られる体表炭化水素プロファイルのアリ偽装の戦略ではなく、本研究で特に新規に見出された植物偽装型の化学戦略をもつと思われるシジミチョウ種に絞って、渡航が可能な研究協力者の協力のもと、植物および幼虫由来サンプルの増強と分析を行い、植物および幼虫の体表に共通してみられる主成分の構造決定に至り、植物偽装型を化学的に示すことができた。熱帯性シジミチョウ類の成果については、カウンターパートであるマレーシア調査地の管理者の協力と許可を得て論文発表を準備中である。 また、海外渡航に支障が出てからは、日本国内のシジミチョウ類でもアリ社会に依存する好蟻性種を対象として、シジミチョウのなかに種によって多様な化学戦略があることを見出してきた。ゴマシジミについては、好蟻性昆虫に従来より知られた体表炭化水素によるアリ偽装を行っている可能性がある一方、キマダラルリツバメはアリ依存を開始する若齢期に体表炭化水素に依存せずにアリ宥和化合物を放出していることが示唆され、微量な揮発性成分の確実な捕集手法の検討を行った。 これらの結果は、アリに絶対的に社会寄生する好蟻性種のなかにも、アリ社会との関係の強度や依存期間に応じて、多様な化学偽装戦略が発達しうることを示している。アリ社会やアリ植物から資源を得る昆虫類が、強力な捕食者であるアリを欺く化学的手段は、巣仲間と誤認させる体表炭化水素偽装が古くから知られ、これがアリ社会侵入に必須な化学的手段とも言われてきたが、もっと多様な戦略がアリとの関係の変異に応じて進化していることを示すことができた。
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