2016 Fiscal Year Research-status Report
学習と資源獲得への時間配分の進化に関する理論・実験研究
Project/Area Number |
16K07524
|
Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
小林 豊 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 准教授 (70517169)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若野 友一郎 明治大学, 総合数理学部, 専任准教授 (10376551)
大槻 久 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 講師 (50517802)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 包括適応度理論 / ニッチ構築 / 社会学習 / 個体学習 / 文化・遺伝子共進化 / 集団構造 / ESS |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画では、28年度の目標は、学習と資源獲得への時間配分戦略の進化において、①集団のグループ構造が技術・知識の蓄積的な発展を促進するかどうか、②ニッチ構築のメカニズムが技術・知識の蓄積的な発展を促進するかどうか、の2点を理論的に検討することであった。28年度は、この予定通り、グループ構造やニッチ構築を考慮した数理モデルを構築した。これらのモデルに対して進化的に安定な時間配分戦略(ESS)を計算し、グループ構造やニッチ構築がESS における集団の技術・知識水準に与える影響を調べた。①については、グループ構造により技術・知識の蓄積的発展が促進される場合があることが分かったが、特殊な状況を除いてその効果は小さいことが分かった。②については、包括適応度理論を用いてESSを求め、さらに特殊な場合において各種パラメータの影響を調べるところまで進んだ。その結果によれば、ニッチ構築のメカニズムは、技術・知識の発展を促進する効果が比較的強い。 研究は、当初の予定どおり、代表者と分担者の計三人が、研究会とメールを通して密に連絡をとりつつ、共同・分担する形で進められた。「グループ構造」、「ニッチ構築」のそれぞれの研究で得られた成果を計二報の論文にまとめ、国際誌に投稿する予定であったが、前者については、予定どおり年度内(3月末まで)に発表された(Ohtsuki, H., Wakano, J. Y., Kobayashi Y. 2017, Theoretical Population Biology, 115, 13-23)。後者については、これから執筆にとりかかる。また、2016年度10月にはスイス・ローザンヌ大学のLaurent Lehmann教授を訪問し次年度に向けて共同研究を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、(1)研究期間の開始前から共同研究者と密に連携が取れていたこと、(2)代表者自身による先行研究が存在したので、先の見通しが予め得られていたこと、(3)十分な研究費が得られたこと、などの理由により、初年度に関しては、おおむね予定通り研究を進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の理論パートは、(1)グループ構造の影響を調べるための理論研究、(2)ニッチ構築の影響を調べるための理論研究、(3)多対一伝承の影響を調べるための理論研究の3つの部分からなる。(1)と(2)については、初年度~次年度にかけて順調に終了する見込みである。(3)については、ローザンヌ大学のLaurent Lehmann博士を共同研究者に加えたことでさらに進展が早まることが期待される。このため、理論パートについては、研究期間である平成30年度末までにすべての結果が十分な余裕をもって発表できると考えられる。 一方、実験研究については、当初の計画では、イギリス・エクセター大学のAlex Mesoudi博士の先行研究で開発された「仮想狩猟具」を活用した実験を行う予定であった。そこで、28年度3月上旬にAlex Mesoudi氏が高知工科大学を訪問・滞在した際には、こうした実験ができるかどうかについて話し合いを行った。この話し合いにおいて、当初計画していたような、仮想狩猟具を活用した実験はプログラミングのための時間的コストが大きすぎるかもしれないという問題が出てきた。そこで、29年度においては、Max Derex博士(Mesoudi博士の研究室に29年度9月より研究員として所属する予定)の協力を仰ぐため、エクセター大学を訪問するとともに、高知工科大学にDerex博士を招致し、共同研究のための話し合いを行う予定である。
|
Causes of Carryover |
(1)当初の予定では個体ベースシミュレーションを行う予定であったが、共同研究者と話し合った結果、個体ベースシミュレーションは不必要であるとの結論に達したため、大型計算機の使用料金が必要なくなったこと、(2)実験用プログラムを作成するためのプログラミング言語を決定するところまで実験計画が進まなかったので、実験用プログラム作成のためのソフトウェアを購入しなかったことなどの理由により次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
(1)イギリスエクスター大学のAlex Mesoudi博士、Max Derex博士らとの実験の計画を進め、実験用プログラムを作るためのプログラミング言語が決定し次第、必要なソフトウェアを購入する、(2)実験のサンプルサイズを当初の予定より増やすことで、結果の精度を高めることにより、28年度の未使用分を29年度の研究推進に活用していく予定である。
|
Research Products
(4 results)