2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K07531
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
市野 進一郎 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 研究員 (30402754)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 老化 / 霊長類 / 繁殖成功 / 進化 / 生活史 / キツネザル / マダガスカル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マダガスカル島に生息する野生ワオキツネザルのメスの生涯繁殖成功の決定要因を明らかにするために、識別した個体を生涯にわたり追跡することで得られたデータを分析している。初年度に老齢個体の定義を再検討(当初に想定していた12歳以上ではなく、15歳以上とした)し、集中的な行動観察(合計4ヶ月半)をおこなった。2年目は、初年度に得られた行動観察データのうち、雨季に得られたデータを分析した。その結果は乾季に得られた結果と異なり、老齢メスとそれ以外のオトナメスの間で社会行動の頻度に有意な差がなかった。これは老齢個体が社会活動性を低下させるという予測を否定する結果で、類人猿やマカク類で報告された老化過程と異なっていた。キツネザル類は体サイズの割に寿命が長いという報告もあり、生活史特性が他の霊長類と異なっている可能性がある。この結果は、ドイツで開催されたSocial complexity(社会の複雑さ)に関する国際シンポジウム等で発表された。また、2回(8月と3月)の現地調査を実施し、人口学データを収集した。主調査地域のオトナメス31頭中21頭が出産し、2017年の出産率は67.7%だった。この値は例年に比べると、かなり低い値であった。主要な食物であるタマリンドの果実が不作であった可能性がある。13歳と14歳のメス2頭の死亡が確認された一方で、14歳メスの出産が記録された。また、主調査地域で最高齢のメス(2018年3月時点で21.5歳)の生存も確認された。それから、ドイツ霊長類センターとの国際共同研究を開始し、データセットに含めるパラメータの検討をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生活史に関するデータ収集と行動観察データの解析は順調に進んでおり、ドイツで開催された国際シンポジウムで中間報告をおこなった。一方、ドイツ霊長類センターとの共同研究はやや遅れ気味である。その理由は、(1)初年度を野外調査を中心とした計画に変更した影響、(2)共同研究者が1年間の期限付きでベルリンの高等研究所に滞在することになった影響である。しかし、その分、行動観察データの解析が進展したので、研究全体としては「おおむね順調に進展している」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度と2年目で野外調査とそこで得られた行動観察データの解析を中心におこなったので、3年目は人口学データの解析とドイツ霊長類センターとの共同研究に比重をおいた計画をすすめる予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 初年度から繰り越した物品購入は予定どおりにおこなったが、現地対応機関の変更(チンバザザ動植物公園からアンタナナリヴ大学理学部)にともない必要となった経費の多く(共同研究で生じる旅費や消耗品代)を国際交流に関する別経費から支出したため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 当初の計画では、3年目は人口学データの解析に比重をおき、マダガスカルにおける現地調査をおこなわない計画であった。しかし、2018年3月の時点で最高齢個体(21.5歳:野外での最高記録)が生存しており、この個体の追跡調査が本研究にとって重要であることから研究協力者による現地調査に支出する予定である。また、本研究は1989年から複数の研究者によって収集されてきた人口学データを基盤にしているが、個体識別の正確性を担保するために、過去の映像や写真、DNA試料を用いた個体確認をおこなう経費としても用いる予定である。
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[Journal Article] Long-term field studies of lemurs, lorises, and tarsiers2017
Author(s)
Kappeler Peter M., Cuozzo Frank P., Fichtel Claudia, Ganzhorn Jorg U., Gursky-Doyen Sharon, Irwin Mitchell T., Ichino Shinichiro, Lawler Richard, Nekaris K. Anne-Isola, Ramanamanjato Jean-Baptiste, Radespiel Ute, Sauther Michelle L., Wright Patricia C., Zimmermann Elke
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Journal Title
Journal of Mammalogy
Volume: 98
Pages: 661-669
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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