2018 Fiscal Year Research-status Report
日本列島および周辺地域における歯根数の時代的変化と系統間変異に関する研究
Project/Area Number |
16K07536
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
真鍋 義孝 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (80131887)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山田 常一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (00244070)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 歯根数 / 時代的変異 / 地域的変異 / 非計測的形質 / 系統間変異 / 小進化 / 歯根融合傾向 / 歯根退化の方向性 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までに、日本列島における新石器時代から現代に至る過去1万年間にわたるヒトの歯根形態の時代的・地域的変異について明らかにし、これらの変異が生じた要因について集団の形成過程や適応の観点から解釈を行ってきている。本研究では、まず現代日本人の上顎大臼歯の歯根の退化傾向について調査を行い、上顎大臼歯の形態形成フィールドにおいては第一大臼歯から第三大臼歯への遠心に向かって、歯根の退化による遠心方向への明瞭な融合傾向が認められた。さらにヒトにおける上顎大臼歯の歯根退化融合傾向が1つの歯の中でどの方向から起こっているかという退化の基本的原理の解明、ならびにその要因について解明するため、弥生時代から現代に至る歯根数の時代的変異の中で退化が最も強く表れている現代日本人の上顎大臼歯歯根の退化融合傾向について、歯種内における歯根退化の方向性ではなく、1歯内で起こる歯根退化の方向性について分析を行った。3根性から1根性への退化過程にあると思われる2根性のものを抽出して、頬側2根の融合、近心頬側根と舌側根の融合、および遠心頬側根と舌側根の融合の3様式に分類して、出現率を比較した。上顎大臼歯における歯根の融合傾向は、 第一大臼歯と第二大臼歯では基本的には頬側と近心の2方向から起こる傾向があるが、遠心からの退化の影響を強く受ける第三大臼歯の場合は、遠心からの融合傾向が頬側や近心からの融合傾向より優位にはたらく傾向があることが明らかになった。この現代日本人における上顎大臼歯の歯種内と歯内の歯根退化融合傾向が、現代の日本列島以外の地域の集団についても同様の特徴を示すのかについて明らかにするため、台湾大学の福建系台湾人の人骨資料の調査を行い、詳細な分析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究のの目標は、前年度から引き続き、日本列島における新石器時代から現代に至る過去1万年間にわたるヒトの歯根数の時代的・地域的変異について、データ収集と分析を行うことである。日本列島の資料としては、北海道、本州、北部九州、南部九州、沖縄における縄文時代、弥生時代、古墳時代、中世、近世、現代の人骨からデータの追加を行った。その過程において、1歯内における歯根の退化傾向の方向性が第一大臼歯と第二大臼歯および第三大臼歯で異なっていることを発見し、その解明を進めるため、当初予定していたデータよりも詳細なデータの採取と解析を行う必要があるため予定より時間がかかっている。さらに現代日本人で明らかになった中間結果がヒトの歯の歯根融合傾向の基本的原理として集団間で共通性を持つのかについて明らかにするためには、他の地域の集団との比較が必要であるため、台湾の福建系台湾人の人骨からのデータの採取を行ったが、まだ充分に分析ができていない状況であるので、現時点ではやや遅れ気味である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに上顎大臼歯の歯根の退化傾向について、歯種内と歯内での歯根退化融合傾向がどの方向から起こるかという基本的原理の解明に向けての調査を行ってきたが、今後は得られた歯根退化の特徴が他の地域でも同様の変異として起こっているかについて解明を進めるため、台湾の福建系台湾人のデータを採取し、解析を進めている。これに加えて、今年度は下顎大臼歯についても歯根の退化傾向の方向性に関する詳細な分析を行っていきたいと考えている。 さらに、肉眼よりも観察精度を高めるための方法として開発した光ファイバーカメラ観察法による歯根膜隙からみた歯根分岐部の画像に基づく歯根形態のデータを加えて、分析を行いたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
研究分担者が調査に同行できなかったため、旅費の使用額に変更が生じた。また物品の購入を延期したため、使用額に変更が生じた。次年度の調査および成果発表では、研究分担者に同行してもらうため、旅費として使用する予定である。また、成果の論文掲載の必要経費としても使用する予定である。
|
-
[Journal Article] Three-dimensional morphological analysis of the human sacroiliac joint: influences on the degenerative changes of the auricular surfaces.2018
Author(s)
Nishi K, Tsurumoto T, Okamoto K, Ogami-Takamura K, Hasegawa T, Moriuchi T, Sakamoto J, Oyamada J, Higashi T, Manabe Y, Saiki K
-
Journal Title
Journal of Anatomy
Volume: 232
Pages: 238-249
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-