2016 Fiscal Year Research-status Report
加齢にともなう動脈硬化の進展はヒトとして必然か ーネパール住民調査を通してー
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16K07541
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大柿 哲朗 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (20101470)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ネパール / 血圧 / 動脈硬化 / 中心動脈指数 / 上腕動脈指数 / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
動脈が硬化すると血圧が上昇する。日本では高血圧者が最も多いと言われている。一方、ネパールの田舎をはじめ工業先進国化する以前の社会では、加齢にともなう血圧の上昇や高血圧者が認められない集団が多数存在する。 平成28年度は、ネパールにおいて1987年に総合的調査を開始し、高血圧者が極めて稀で、加齢に伴う血圧上昇も認められず、肥満、糖尿病など生活習慣病がほとんど認められない丘陵地農村Kotyang村(標高800~1,200m、Kavrepalanchok District, Panchikal, Municipality 12)において農民の血圧、動脈硬化の指標である中心動脈指数(AVI)、上腕動脈指数(API)、上腕囲などの測定、生活習慣調査などを実施した。動脈硬化指数は20~84歳の男性111名、女性97名から得られた。 収縮期血圧と拡張期血圧が最も高かったのは男性が150mmHgと100mmHg(42歳)、女性が150mmHgと102mmHg(53歳)で、収縮期血圧と拡張期血圧の平均値は、男性が109±13mmHgと68±10mmHg、女性が105±14mmHgと68±10mmHgであった。年齢と血圧の相関は男性では全く有意ではなく、女性では収縮期・拡張期とも有意(p<0.01)であった。動脈硬化指数のAVIとAPIは、日本人のより明らかに低く、男性では年齢と有意な関係は認められず、女性では血圧同様に有意な関係にあった。加齢とともに動脈の硬化が進行するかどうかは男女で異なる結果が得られ、今後さらに詳しい分析を行うとともに、さらに調査地を変えた測定調査を行い、さらなる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネパールでは2015年4月に大きな被害をもたらした地震が発生した。上記の丘陵地農村のほとんどの世帯が家屋全壊や半壊の被害を受けたが、それでも平成28年度は、上記の丘陵地農村で人数は予定より少ないながらも当初の計画どおり測定調査を実施できた。平成28年度は、Tribhuvan大学医学部教育病院のSashi Sharma教授と相談し、平成29年度のKthmanduの近郊農村の調査地を選定する予定であった。しかし、Sharma教授が推薦する都市近郊農村は、ネパール地震の影響でまだ調査が受け入れられる状況になかった。都市近郊の農村の調査地については、Sharma教授と電子メールで相談する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、今回測定調査を実施した丘陵地農村で測定人数を増やすとともに、さらにこの村の近くにある他の村での測定調査を行う。また都市近郊農村での測定調査を模索する。
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