2017 Fiscal Year Research-status Report
Photosysnthetic activity of spikes measured by albino lemma mutants in barley
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16K07556
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
武田 真 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (40216891)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オオムギ / 変異体 / 遺伝子 / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(H29)は人為的に誘発されたオオムギ白穎(alm1)突然変異体11系統を供試し、白穎遺伝子の単離実証を試みた。これまでの遺伝マッピングから白穎形質の有力な候補遺伝子として、HvGLK2遺伝子が浮上した。ここでHvはオオムギの学名の略称を表す。この遺伝子が白穎表現型の分子実体であることを証明するために、上述のalm1変異体11系統とそれぞれの原品種のHvGLK2遺伝子全長のゲノム配列を決定した。その結果、全ての変異体において非同義置換がHvGLK2遺伝子上に検出された。これらはいずれもHvGLK2遺伝子の機能的に重要とみられドメインまたはモチーフに影響するとみられた。この証拠から、オオムギ白穎遺伝子(alm1)の分子実体はHvGLK2転写因子遺伝子であることが実証された。 次に、オオムギ白穎遺伝子の原因遺伝子であるHvGLK2転写因子遺伝子の発現解析を量的RT-PCR(qRT-PCR)により実施した。材料にはオオムギ品種ミサトゴールデン(皮性・二条)とその白穎人為誘発変異体almーミサトゴールデンを供試した。出穂期の止葉葉身、内・外穎および芒の3器官よりRNAを抽出し、HvGLK2遺伝子に加え、そのホモログであるHvGLK1遺伝子に特異的なqRT-PCR用遺伝子特異的プライマーを設計し、定法に従い、遺伝子発現量を定量した。その結果、ミサトゴールデンとalm-ミサトゴールデンでともに穎におけるHvGLK1遺伝子の発現がHvGLK2に比べ有意に低下していた。残りの2器官すなわち葉身と芒では両遺伝子は同程度に発現していた。このことから、頴においてHvGLK1遺伝子の発現量が低いためHvGLK2遺伝子異常の影響を相補できないことが、白穎変異体で内・外頴が器官特異的に白化することの原因と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オオムギに特異的な、穂のみが白化する白穎(alm)突然変異体の候補遺伝子が特定でき、次いで11系統のalm独立変異体の遺伝子解析により、alm遺伝子がHvGLK2であることが実証できた。オオムギは、80%以上が反復配列でゲノムサイズが50億塩基対と巨大で複雑なゲノムをもち、ゲノム配列が部分的にしか解読できていない。そのような、不利な研究材料にもかかわらず、短期間でalm変異体の原因遺伝子の特定に至り、研究が順調に進捗していると自己評価できる。また、オオムギ白穎表現型が内・外穎で特異的に形質発現する理由も遺伝子の発現量の調査で解明できた。これにより、オオムギの穂での光合成が収量生産にどの程度貢献するかを解明するための、植物生理学的研究に移行できる。さらに研究を深化させるべく努力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
オオムギ白穎変異体と原品種(正常の緑穎色)の系統対で、幼苗期の葉身、と出穂期の穂における光合成量を専用の測定装置を用いて計測する。形態や収量関連形質も調査する。 オオムギ白穎(alm)遺伝子の原因遺伝子HvGLK2は他のモデル植物や双子葉作物の研究から葉緑体の合成を制御する転写因子であると報告がある。オオムギ穎における葉緑体の形態を白穎変異体と野生型との間で、透過型電子顕微鏡による観察を実施し、比較する。これは同一部局内の電子顕微鏡の専門家の協力を得て実施する。 これまでに得られた研究結果を原稿に取りまとめ、国際誌に論文投稿し、受理されるよう努力する。
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Causes of Carryover |
研究は順調に進んでおり、2年目のH29(2017)年度は予定していたよりも少ない研究費で研究は実施でき、論文投稿に必要な結果はほぼ揃った。本研究のように、オオムギの重要な遺伝子単離と機能証明は世界的(とくに欧米)に競合の激しい分野であり、実験成果を論文として1番で発表するには、機密保持を徹底して実験を遂行し、論文受理を勝ち取る必要がある。そのため、2年目に計上していた学会参加旅費は、一切使用しなかったため残額が出た。 最終年度(2018、H30)において本成果を他の競合相手より早く、優れた内容の論文として出版することを最優先事項と考えている。これまで執行していない経費を最終年度(2018、H30)に繰り越して使用することをお許しいただきたい。
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Research Products
(2 results)