2016 Fiscal Year Research-status Report
野生イネにおける新規雑種黄化遺伝子の同定および分布 豪州の野生イネの起源に迫る
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16K07558
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
一谷 勝之 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (10305162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保山 勉 茨城大学, 農学部, 教授 (10260506)
石川 隆二 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (90202978)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 雑種黄化 / 生殖隔離 / 種分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
栽培イネOryza sativaの祖先野生種でAAゲノムをもつO. rufipogonはアジア南部,マレー諸島,ニューギニア,オーストラリア北部に分布する.オーストラリアにはAAゲノムをもつ別の野生イネO. meridionalisも分布している. アジアの野生イネ O. rufipogon系統W0106と交雑すると葉の先端が黄色くなる雑種黄化現象を呈する野生イネがオーストラリアのO.rufipogonと,O. meridionalisにのみ見出された。このことは,遺伝的に遠いとされてきたO. meridionalisとオーストラリアのO. rufipogonが同じ核ゲノム遺伝子を共有していることを示唆する. 2016年はオーストラリアの野生イネとしてW0106と同じに属するW2109系統を交配親に用い,反復親としてアジアの栽培イネO. sativaの台湾品種 台中65号(T65と略)を用い,[(T65 × W0106) × T65] × [(T65 × W2109) × T65] の集団 (BC1F1に相当する.以下,本稿では,この世代を便宜的にBC1F1と表記し,戻し交雑を進めた世代をBC2F1, BC3F1・・・と表記する)に黄化を示す個体が分離したので,黄化個体の自殖後代BC1F2世代を展開し,黄化に関する連鎖分析を行った.その結果,第7染色体のDNAマーカーRM500がヘテロ接合の個体に黄化個体が明らかに多く見出されることが発見された.また,BC1F1世代の黄化個体にT65を戻し交雑して得られたBC2F1世代では,黄化個体が観察されなかった.以上の結果は,W0106とW2109がもつ黄化原因遺伝子はいずれもRM500の近傍に座乗すること,黄化原因遺伝子の座乗位置はかなり近接していることを示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
採択が年度途中の2016年10月であったため,研究の開始が遅れた.幸い,実験材料は植えていたため,実験は進めることができた. また,原因遺伝子が互いに近接していることは予想しておらず,2015冬から2016年春に温室で栽培したBC2F1世代で黄化個体が得られない原因を冬場の低温と考えたため,有望なBC2F2世代を2016春までに得られなかった.現在,DNAマーカーの遺伝子型に基づき,温室でBC2F2世代を栽培しており,幸い,2017年の普通期栽培までに収穫できる予定である, W2109のゲノムを次世代シークエンサーで読む予定にしており,ロングリードが多数得られる最新の機器で読むはずであったが,受託会社の業務開始が2016度中に始まらなかったため,ゲノムを読むことができなかった.委託解析にかかる費用は繰り越しているので,2017年度に委託解析する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
雑種黄化原因遺伝子座が近接しており,原因遺伝子がヘテロ接合の際に黄化が発現する可能性が出てきた.そのため,科研費申請当時予定していた,一方の遺伝子座を原因遺伝子で固定し,もう一方の遺伝子座の遺伝子座が分離する集団を育成して遺伝子の本体を突きとめるという方法をとれなくなった.このため,両遺伝子が同時に分離する大集団を供試して,原因遺伝子がヘテロ接合の際に黄化が発現する可能性,連鎖する別の遺伝子座の可能性の両方に対処できるようにする. 2016年の観察では,W0106 とオーストラリアのO. rugfipogon W2109の雑種よりも,W0106とO. meridionalisの雑種の黄化の方が,黄化の程度が高く,生育全体も劣っていた.O. meridionalisの1系統W1297にT65を連続戻し交雑した材料があるので,これにW0106または,W0106の黄化原因遺伝子をもつ T65を反復親にしたBC2F2世代を交配し,W1297の黄化原因遺伝子の座乗位置を明らかにする. W2109のゲノムを委託解析し,特にRM500近傍について詳しく分析するとともに,公表されているO. meridionalisの配列と比較し,共通性が高いかどうか検討する. 保持している 栽培イネO. sativa系統,アジアのO. rufipogon系統,ニューギニア,オーストラリアのO. rufipogon系統,O.meridionalsi系統と黄化原因遺伝子をもつW0106, W2109(またはT65に戻し交雑した黄化原因遺伝子に関する準同質遺伝子系統を交雑し,黄化原因遺伝子の分布を調べるための材料作りとする.また,遺伝子同定の一助として,黄化現象の形態学的・生理学的解析を進める.
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Causes of Carryover |
W2109のゲノムを次世代シークエンサーで読む予定にしており,ロングリードが多数得られる最新の機器で読むはずであったが,受託会社の業務開始が2016度中に始まらなかったため,ゲノムを読むことができなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度はW2109のゲノムを次世代シークエンサーで読む予定にしており,ロングリードが多数得られる最新の機器で読む予定である.
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