2016 Fiscal Year Research-status Report
非休眠性個体を高頻度で含む野生コムギ集団の探索―栽培化過程で人は何を選んだか?
Project/Area Number |
16K07559
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
大田 正次 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (80176891)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 野生コムギ集団 / トルコ南部 / 種子休眠性 / 栽培化 / 遺伝的多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①トルコ南部の栽培化起源地の野生一粒系および野生二粒系コムギの集団における種子休眠性個体頻度を明らかにし、栽培化に伴う「種子休眠性の消失」の過程を具体的データに基づいて推察すること、②集団内および集団間の遺伝的変異の解析に供するために、野生コムギ集団から抽出した模擬自然集団を育成すること、である。この目的のために、計画1年目の2016年度には、9月、10月、3月にトルコに渡航しチュクロワ大学農学部で以下の実験を行った。 1. 自然集団で採集した野生一粒系コムギ11集団の穂のサンプルから、1穂あたり1粒を採り播種、合計641個体を集団番号と個体番号により個体識別して、チュクロワ大学農学部の実験圃場に定植、現在成育中である。 2. 自然集団で採集し、前年度に1穂あたり1粒を採り個体識別して栽培、自殖採種した野生二粒系コムギ11集団448個体から各個体1粒を播種、チュクロワ大学農学部の実験圃場に定植、現在成育中である。 3. 二倍体の野生一粒系コムギには穂の形態では判別が困難な別種ウラルツコムギが、また、四倍体の野生二粒系コムギにも穂の形態が酷似した野生チモフェービコムギが存在する。これらの種の分布は重なっており、今回栽培している集団にも両者が混じっている可能性が大きい。チュクロワ大学農学部の実験圃場で栽培中の野生一粒系コムギおよび野生二粒系コムギのすべての個体について、葉面の毛の密度、長さ、柔らかさから、形態的にこれらの種を区別することを3月末に試みた。その結果、野生一粒系コムギとして栽培している11集団のうち、4集団が野生一粒系コムギ、5集団がウラルツコムギ、2集団が両者の混生集団であることが示唆された。また、野生二粒系コムギとして栽培している11集団のうち、9集団が野生二粒系コムギ、1集団が野生チモフェービコムギ、1集団が両者の混生集団であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に発芽実験した野生二粒系コムギで非休眠性個体頻度の高い集団が見つかった。そのため、当初の計画では野生一粒系コムギのみを栽培する予定だったが、野生二粒系コムギについて反復実験を行うため、11集団448個体を野生一粒系コムギと同時に栽培することとした。実施状況に述べたとおり、チュクロワ大学農学部での栽培は順調に進んでいる。また、野生一粒系コムギとウラルツコムギ、および野生二粒系コムギと野生チモフェービコムギが自然集団で混生していることは以前から知られていたが、その混生状況に関する具体的データが得られたのは初めてである。以上のことから、研究計画は順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度には、2016年度秋からチュクロワ大学で栽培している野生一粒系コムギ(ウラルツコムギを含む)と野生二粒系コムギ(野生チモフェービコムギを含む)について以下の実験を実施する。 1. 野生二粒系コムギ:11集団448個体について、DNA解析のための葉のサンプリングを行いチュクロワ大学でDNAを抽出する(チュクロワ大学農学部の海外共同研究者に委託)。また、個体あたり4~5穂に袋をかけ自殖させ(海外共同研究者に委託)、8月~9月にチュクロワ大学農学部で穎果の形態と発芽試験を行い、各集団の非休眠性個体頻度を明らかにする。 2. 野生一粒系コムギ:11集団641個体について、DNA解析のための葉のサンプリングを行いチュクロワ大学でDNAを抽出する(チュクロワ大学農学部の海外共同研究者に委託)。また、個体あたり2~3穂に袋をかけ自殖種子を得、10月に各個体から1粒を採り播種する。 3. 模擬自然集団の育成:野生二粒系コムギについては、今年収穫した11集団の種子を個体識別して保存し、模擬自然集団とする。野生一粒系コムギについては、今年収穫した種子を個体識別して秋に播種、自殖を重ね2018年度に収穫した種子を模擬自然集団とする予定。
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Causes of Carryover |
2017年度に使用予定の自殖用グラシン紙袋を購入する予定であったが、予定していた数を購入するには金額が不足しているため、2017年度助成金と合わせて購入することとし、未使用とした。2016年度と2017年度の二度に分けて発注すると単価が高くなるため、まとめての発注することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度助成金と合算して自殖用グラシン紙袋を2017年度初めに購入する。
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Research Products
(1 results)