2017 Fiscal Year Research-status Report
DNA転移因子nDart1の挿入で生じる優性変異の利用による新規育種素材の開発
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16K07561
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
栂根 一夫 基礎生物学研究所, 多様性生物学研究室, 助教 (50343744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 雅彦 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (00142703)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イネ / 優性 / 顕性 / トランスポゾン |
Outline of Annual Research Achievements |
イネのDNA転移因子nDart1は非自律性であり、ゲノム中の一因子の自律性因子であるaDart1-27によって転移を誘導される。nDart1は転移頻度が高く劣性(潜性)の変異だけでなく、しばしば優性(顕性)変異体も出現する。この優性変異を利用して新奇の育種素材を開発することを目指す。種子が大粒化した変異体であるLarge grain(Lgg)は、このnDart1をコシヒカリに交配によって導入して変異体を選抜している集団(MK1)から分離した。Lgg変異は一遺伝子に支配される優性変異であるので、nDart1の挿入領域の同定法であるnDartトランスポゾン・ディスプレイ法によって原因遺伝子の同定を試みた。この研究を発展させて、(1)野生型におけるLGG遺伝子の機能解析、(2)優性のLgg変異となっている原因の解明と育種素材としての評価、(3)新たな優性変異体の分離と解析を行うことを試みることを目標とする。 このLggの大粒化の原因が、細胞数の増加なのか、細胞の大きさの違いなのかを籾の細胞の大きさを指標にして観察を行っている。籾の細胞の大きさを容易に観察する方法について共同研究を行い新規の手法を開発した。 Lgg変異の原因遺伝子の同定に成功し、nDartの挿入がLGG遺伝子の発現を変化させていることを確認した。野生型LGG遺伝子の発現量を上昇および低下させた形質転換体を作出し、遺伝子の機能相補を行った。これらの遺伝子発現量の変化個体を用いて発現の変化する遺伝子の解析を始めた。 新たに得られたBdt2変異体をほ場において、大規模に展開し表現型の確認を行い2因子によって支配されていることを確認し、原因遺伝子の同定の準備を始めた。また、新たにMK1の3000個体をほ場において育生し変異体の選抜を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トランスポゾンnDart1の挿入様式がこれまで得られてきた変異体とは異なることが判明したので、新たな方法で機能相補を行ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1 ) 野生型LGG遺伝子の機能解析を進める。LGG遺伝子の塩基配列を元に相同性から機能予測を行いタンパク質を精製することによって、機能解析を行う。
(2) Lgg変異体の優性変異の原因の解明を進める。nDartの挿入によってLGG遺伝子の発現がどのように変化したのかを、時間的・空間的に明らかにする。また、これまでのnDart挿入変異体の解析の経験から、変異体の完全長のcDNA発現を確認する。
(3) 新たな優性変異を選抜する。優性でわい化し分げつが増えるBdt2変異体は、2因子によって支配されていることが明らかになったので、解析を進める。
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Causes of Carryover |
当初予定していた計画よりも1年進んで、2系統の形質転換体を得ることができた。新たに作出したLGG遺伝子発現の低下および上昇した形質転換体から得た幼穗からRNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いたRNA-seq解析を行った。RNA-seqの結果を解析するために次年度に必要な予算が生じた。この予算を用いてLGGの発現変異体で変動している遺伝子を解析する。
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