2016 Fiscal Year Research-status Report
コシヒカリに由来する炊飯米の良食味遺伝子の同定と機能解明
Project/Area Number |
16K07564
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
堀 清純 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター 稲研究領域, 主任研究員 (50442827)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イネ / 食味 / コシヒカリ / 炊飯米 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに見出した炊飯米の食味を向上させる効果を持つ遺伝子座(QTL)の候補遺伝子について、コシヒカリの突然変異体ライブラリーの約3,000系統の中から、遺伝子内にアミノ酸置換が生じた突然変異系統を取得した。この突然変異系統を圃場栽培して収穫米を取得した。候補遺伝子の発現を強制的に低下させたRNAiノックダウン形質転換体や過剰発現させた形質転換体を作出し、閉鎖系温室内で栽培して収穫米を取得した。これらの収穫米について機器計測による食味評価は未実施だが、候補遺伝子の効果を検証する準備が整った状況であるといえる。古今東西の日本水稲品種群について候補遺伝子のゲノム塩基配列を調査し、一部の在来品種および最近の育成品種の多くがコシヒカリと同じタイプの遺伝子配列を保持していることを明らかにした。この結果から、コシヒカリの良食味遺伝子の育種利用が拡大していると考えられる。さらに、コシヒカリと複数のインディカ品種を交配して、良食味遺伝子を導入したインディカ系統の作出を開始した。 また、日本水稲品種群の180品種について、収穫米の炊飯食味特性に関係する合計35形質を調査して、全ゲノムDNAマーカーを用いた連関解析を実施した。解析の結果、382ヶ所の遺伝子座(QTL)を検出でき、第6染色体短腕のWx座周辺に最も数多くの遺伝子座が検出された。これらの検出された遺伝子座が、日本水稲品種における炊飯米の食味特性の差異に関与していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的に課題の進捗に問題はない。候補遺伝子の突然変異系統や作出した形質転換体の収穫米の炊飯食味特性の評価は未実施であるが、次年度前半に達成見込みである。また、当初計画外の成果として日本水稲品種群における炊飯食味特性の評価と遺伝子座の検出に関する解析結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
炊飯米の食味を向上させる候補遺伝子の遺伝解析については、引き続き当初計画に基づいた研究を推進するとともに、多数の日本水稲品種を用いた連関解析についても複数年次における解析結果を取得する。作出系統の収穫米の形質評価については、米の品質評価や機器分析を専門とする研究者の協力を受けて、様々な側面から炊飯食味特性を評価して候補遺伝子の機能を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度に当初計画していた研究補助員への賃金および国際学会発表のための海外旅費相当分について、適任者不在や学会不参加等により執行が実現しなかったことから、その人件費および旅費相当分をH29年度に繰り越すこととなった。消耗品等の物品費については予定通り使用した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度以降に本研究課題に関する研究補助員の雇用と国際学会発表を予定しており、その人件費および海外出張旅費として使用する予定である。なお、消耗品等の物品費については当初計画通りに使用する予定である。
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