2018 Fiscal Year Research-status Report
コシヒカリに由来する炊飯米の良食味遺伝子の同定と機能解明
Project/Area Number |
16K07564
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
堀 清純 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, 上級研究員 (50442827)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イネ / 食味 / コシヒカリ / 炊飯米 |
Outline of Annual Research Achievements |
炊飯米の食味を向上させる効果を持つ遺伝子座(QTL)の候補遺伝子に関する突然変異系統群やRNAiノックダウン形質転換体を栽培して、2年目の食味関連形質を評価した。炊飯賞味計やテンシプレッサーを用いた機器分析により食味評価を行ったところ、一部の突然変異系統およびRNAiノックダウン形質転換体では食味値が低下しており、炊飯米の粘りが小さくなっていた。2年間の収穫米の評価結果から候補遺伝子が炊飯米の食味を制御する遺伝子の一つであると考えられた。また、コシヒカリ、日本晴、コシヒカリの良食味に関するQTL領域をコシヒカリ型に固定した日本晴の遺伝的背景の置換系統および日本晴型に固定したコシヒカリの遺伝的背景の置換系統の収穫米について、GC-MSによるメタボローム解析を実施して、胚乳中に含まれる遊離アミノ酸や遊離糖類の含有量を測定した。コシヒカリやコシヒカリ型QTLを持つ日本晴系統は、日本晴と比較して、一部のアミノ酸や糖類の化合物含有量が多くなっていた。これまでにコシヒカリ、日本晴、コシヒカリの置換系統および日本晴の置換系統の比較から、炊飯中の溶出糖量についても差があることが明らかとなっている。従って、コシヒカリの良食味QTL(QTLの候補遺伝子)の有無の違いにより、澱粉やアミノ酸や糖類の一部の穀粒含有成分が変化している可能性が考えられた。 さらに、コシヒカリと複数のインディカ品種を戻し交配した後代個体群について連続戻し交配により、良食味遺伝子座を導入したインディカ準同質遺伝子系統群の作出を継続した。また、日本水稲品種群の180品種の3年間の収穫米を用いたゲノムワイドアソシエーション解析を行い、食味形質の違いに関係する合計382ヶ所の遺伝子座を検出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的に課題の進捗に大きな問題はない。当初の計画通りに、候補遺伝子の突然変異系統や作出した形質転換体の炊飯食味特性を順調に進めることができた。また、日本水稲品種群における各種の炊飯食味特性のゲノムワイドアソシエーション解析により、多数の遺伝子座を検出することができた。しかしながら、研究成果を発信するために、今後、原著論文のとりまとめを進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では炊飯米の食味を決定する遺伝子の単離・同定を進めているが、単離した食味遺伝子の植物胚乳内における詳細な機能を証明するためには、追加の分子生物学実験が必要であると考えられる。また、様々な側面から炊飯食味特性を評価して候補遺伝子の機能を明らかにしていく必要があることから、米の品質評価や機器分析を専門とする研究者の協力を受けながら、学会発表や原著論文による研究成果のとりまとめを進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度に当初計画していた本研究課題に関する研究補助員の賃金について残金が発生したことから、その相当分を後述の課題遂行のために令和元年度に繰り越すこととした。本研究課題では炊飯米の食味を決定する遺伝子の単離・同定を進めているが、単離した食味遺伝子の植物胚乳内における詳細な機能を証明するためには、追加の分子生物学実験が必要であると考えられる。また、様々な側面から炊飯食味特性を評価して候補遺伝子の機能を明らかにしていく必要があることから、米の品質評価や機器分析を専門とする研究者の協力を受けながら、学会発表や原著論文による研究成果のとりまとめを進めていく予定である。
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