2020 Fiscal Year Annual Research Report
An attempt to construct stable and high yielding cultivation methods through the approach from the system controlling the filling priority of grains within the panicle in rice
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16K07566
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 貞二 東北大学, 農学研究科, 助手 (70155844)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2021-03-31
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Keywords | イネ / 穎果 / 登熟 / 登熟優先度 / 水不足 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネには登熟優先度調節系が存在し、低source/sink比下では優先度が低い弱勢な穎果の初期成長が遅延、そして胚乳の細胞数の減少とデンプン合成能力の低下により登熟・品質が悪化すること示してきた。本研究では、穂の登熟優先度調節が弱く、高登熟、安定多収となる栽培の構築を目指した。 前年度のポット実験では、75%遮光下で土壌のマトリックスポテンシャルが-25kPaに達した段階で灌水する水不足処理を登熟初期から成熟直前まで繰り返すことにより、登熟優先度調節の強さが低下し、登熟が向上することを示した。今年度はポテンシャルが-15kPa、-25kPa、-35kPaに達した段階で灌水する3つの水不足処理を行った。 登熟優先度調節の強さの低下と登熟の向上は-25kPa区のみで認められ、下位の3次籾で効果が顕著であった。無遮光下では処理に関係なく登熟は良く、処理の悪影響もなかった。なお、遮光した-35kPa区では茎が挫折し登熟が悪化した。 栽植密度と追肥窒素量を変えた圃場実験でも、水不足処理(-25kPa)を行った。7月の極端な低日照のため、一穂穎花数の追肥による増加や栽植密度による違いが小さかった。さらに徒長により登熟後半に倒伏した区が生じた。また、前年度までに暗渠の上に籾殻を投入する排水対策等を行ったが、その効果は小さかった。処理がなされ、倒伏しなかった疎植区について調べた結果、処理による登熟優先度調節の強さの低下と登熟の向上が認められた。しかし、その程度は本研究で行った何回かのポット実験の結果より小さかった。出穂後3週間の極端な高日照が処理の効果を小さくしたと考えられた。 以上より、ポテンシャルが-25kPaに達した段階で灌水する処理が、登熟優先度調節の強さを低下させ、登熟歩合と品質を向上させる有用な栽培法であり、とくに日射が少なく登熟が悪化しやすい場合に有効であることが示された。
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